野口の振袖の続き

第三千七百十七回目は、野口の振袖の続きです。

私はものづくりをするときに、模様が大胆な時は色は平凡(グレーかベージュ)にします。経済政策にたとえれば、金融緩和と財政緊縮をミックスするのと同じ原理です。しかし野口は違う原理で作ってるみたいですね。色と模様で大胆どうしを組み合わせています。

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いちばん上の写真は、マエミにあるメインの模様です。振袖にピアノといえば、中村大三郎の代表作を連想します。「中村大三郎 ピアノ」で画像検索するとすぐ見られます。あちらは振袖にピアノが描いてあるのではなく、振袖を着た人がピアノを弾いているんですけどね。

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写真2番目以降は、各楽器を撮ってみました。けっこう意外な楽器や地味な楽器もあります。京友禅の図案で器物模様にした場合、器物を取り方にして中に植物文や吉祥文を入れたりするものですが、この作品では本当に器物を描いています。ただ、ハープにだけは桜唐草文様が入っていて、やや取り方的な使い方をしています(写真5番目)。色については自由にやってますね。

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野口の振袖

第三千七百十六回目の作品として、野口の振袖を紹介します。

染料をたっぷりと含みそうな、しぼの大きい縮緬地に染められた振袖です。以前このタイプの振袖で、宝尽し文様のものを紹介したことがありましたが、今年(制作は昨年)はその派生型か、個性的なバージョンになって現れました。

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いちばん上の写真は全体です。

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写真2番目は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真3番目は、後ろ姿です。

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写真4番目は、袖の一部です。

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写真5番目は、左の胸から肩です。衿は無地です。衿にごちゃごちゃ柄が無い方が良いという判断でしょう。顔の周りはすっきりしている方が良いという人は多いですね。

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写真6番目は、首の後ろ辺りです。顔の周りのごちゃごちゃしていない代わり、顔の後ろは意外に模様が有ります。家紋を入れる場所ではありますが、このタイプの振袖に家紋を入れる人は少数派という判断でしょう。

野口の振袖

第三千七百回目の作品として、野口の振袖を紹介します。

しぼの大きい縮緬を使った手描き友禅の振袖です。しぼの大きい縮緬の生地は、染料の含みが大きいためか、京友禅のイメージどおりの深い色を表現するのにふさわしい素材だと思います。これまで野口と岡重の作品の多くがしぼの大きい縮緬を使っていて、それが両社の京都らしさになっていました。

しかしながら一昨年あたりからしぼの大きい縮緬の生産が減ったのか、野口の着尺が別の生地になってしまったんですね。新しい生地は地紋のある生地で、それはそれで悪くはないのですが、色の深みという点で劣る気がします。この振袖は今まで通りのしぼの大きい縮緬を使っています。貴重になってしまった生地は通常の着尺に使わず、高く売れる振袖に重点的に回したのだろうと思います。

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いちばん上の写真は全体です。江戸時代の小袖にもある花の丸模様です。写真で見えているのは9個ですが、全体を数えてみると全部で13個あり、花の種類は牡丹、桜、楓、菊、梅の5種類ですが、1つの丸には1種類というようにちゃんと整理されています。

図案としてつくる場合は、パーツとしてつくり、組み立てることができるので合理的ですね。最近製造業の話で、自動車のように各パーツを擦り合わせないと性能が発揮できないものと、パソコンのように性能の良いパーツさえ調達すれば高性能なものができるものとがあって、後者は新興国でもできてしまうから日本の強みが発揮できないということが言われます。

この図案はそのようなもので、江戸時代の小袖の花の丸の図案を上手に並べればできますし、並べ替えると何種類もできるんですね。一方、波が全身につながるような図案は、すり合わせが大事な技術に似ていますね。

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写真2番目は、マエミとオクミにまたがるメインの模様です。菊です。

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写真3番目は、メインの模様の下にある模様です。ほぼオクミにあります。花の丸というより、四角い配置になっています。桜です。

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写真4番目は、マエミの下の方にある模様です。中央にある縫い目は、脇縫いです。牡丹です。

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写真5番目は、後姿の模様です。縫い目は背中心です。牡丹です。

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写真6番目は、下前の模様です。梅で、私は気に入っているのですが、残念ながら着ると見えないんですね。

女児のお宮参りの着物

第三千六百八十回目の作品として、女児のお宮参りの着物を紹介します。

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いちばん上の写真は全体です。

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写真2番目は、背中の模様で、おばあちゃんが孫を抱いて掛けた時にいちばん見える場所です。

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写真3番目は、普通の着物で言えばマエミにあたる場所ですが、掛け着としての本来の用途では特に意味のある場所ではありません。七五三の着物に流用する場合は前姿のいちばん大事な場所になりますね。昨日の小倉貞右のお宮参りの着物も七五三に流用すればちょうど良い模様配置になります。

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写真4番目は袖です。どこの場所も同じ模様のように見えますが、鶴のポーズも若松の形も全部違います。決して型を繰り返し使っているわけではありません。技法としては手描きか手挿しだと思います。

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写真5番目は、背中の裾の方です。

女児のお宮参りの着物(作者は小倉貞右さん)

第三千六百七十九回目の作品として、女児のお宮参りの着物を紹介します。作者は小倉貞右さんです。

昨日は女児のお宮参りの紹介をする際に、お宮参りの着物というのは千治や野口のような友禅メーカーではなく、専業メーカーによって作られるので、私はお宮参りの制作者も工程も知らないと書きました。しかしながら、何かの事実があれば必ずその反対があるもので、今日はお宮参りの専業メーカーではなく、友禅作家によってつくられたお宮参りの着物を紹介します。

東京の友禅作家である小倉貞右さんのもので、今は息子さんの隆さんが活躍していますよね。百貨店で本人登場の個展をされることもありますし、それが人気ブロガーのブログに取材されることもあります。

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いちばん上の写真は全体です。着物の上半分は桜楓、下半分は糸巻です。糸巻というと染織用品みたいですが、柄が有って回転するようになっているので凧の糸巻ですね。お正月に使うので縁起物として良いし、遊び道具なので子供の着物モチーフにちょうど良いということです。

注目すべきは、着物の上半分と下半分で模様が違うことです。本来なら着物の上下は帯で分断されるところですが、お宮参りの着物なので帯はしません。お宮参りの着物というのは、おばあちゃんが孫を抱いてその上に掛けることを想定し、背中辺りにメインの模様を付けるのですが、この着物では大人の訪問着と同じように裾にメインの模様が有って、しかもマエミ辺りに比重がありますね。

孫を抱いて掛けたときにいちばん良く見える箇所はサブメインの模様ともいうべき桜で、お宮参りの着物の専業メーカーから見れば勘違いのように思えるのではないでしょうか。しかしながら、桜楓がとても魅力的なので、これで良いような気もします。それは友禅作家としての力ですね。友禅作家としては一流で、お宮参りの着物の制作者としては素人の人がつくったというのが、これほどはっきりわかるのも珍しいです。

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写真2番目は、裾の方の模様です。糸巻は5つですが、梅、桜、橘、杜若、楓という5つの植物文が描かれています。

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写真3番目は、背中の中ほどの模様です。裾グループのメインのモチーフの1つですが、大人の着物ならおはしょりの中になってしまう辺りです。

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写真4番目は、袖の模様です。てても魅力的な桜で、私は糸巻より気に入っていて、こちらの模様が上半身のよく見える箇所で良かったと思っています。

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写真5番目は、もう片方の袖の模様です。

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写真6番目は、本来なら家紋を付ける辺りの模様です。

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写真7番目は作者の落款です。