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一の橋の付け下げ「紅葉流水」の続き

第三千八百六回目は、一の橋の付け下げ「紅葉流水」の続きです。

今日は細部を近接で撮ってみました。撮ってみたらどこも同じようで恐縮しています。倉部さんの付け下げは、物語として展開していくような意匠ではなく、完成度の高いパーツを繰り返して見る意匠だからしょうがないですね。そこはやはり友禅と繍箔の違いなんじゃないでしょうか。小袖の時代でも、友禅の発明によって、絵画性が高く物語として展開していく小袖の意匠が生まれたのだと思います。

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いちばん上の写真は、マエミの上の方にある紅葉の近接です。繍箔のこの作品でも、赤と緑の2色だけとはいえ、彩色が行われています。しかしこの2色はじつは友禅ではなく、顔料によるものです。顔料の持つ不透明感のおかげで、金箔に負けない存在感が得られているのだと思います。

縁蓋を使った金彩に負けないためには、生地に浸み込む染料の自然な感じより、生地に接着剤で着けた顔料のくっきり感が合いそうです。顔料部分も縁蓋を使っているのでしょうか。

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写真2番目は、オクミにある紅葉の近接です。

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写真3番目は、マエミの下の方にある紅葉の近接です。

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写真4番目は、後姿にある紅葉の近接です。
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[ 2017/07/14 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付け下げ「紅葉流水」(実際の制作は倉部さん)

第三千八百五回目の作品として、一の橋の付け下げ「紅葉流水」を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

龍田川とも呼ばれる、紅葉と流水のモチーフですが、全くひねりの無いとても平明な表現です。倉部さんの箔と刺繍の加工だけが見どころですね。倉部さんでなければ意味がない作品ですし、倉部さんの凄さを引き立てるには、こんな平明な図案の方が効果的なのかもしれません。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は片袖です。もう片方の袖は無地です。

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写真4番目は胸です。
[ 2017/07/13 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

都織物(385)のすくいの八寸の名古屋帯「気」の帯合わせ

第三千七百九十七回目は、都織物(385)のすくいの八寸の名古屋帯「気」の帯合わせです。

昨日、すくいと綴の違いを書きましたが、それは私の観察によるもので呉服屋さんでは異論も多いのではないかと思います。一般的には、綴の仲間のうち、紬系の糸で織られ紬の着物にしか合わせられないのがすくいと考えているばあいの方が多いのではないでしょうか。実際に、綴よりもすくいの方がカジュアルに合わせるものが多いです。またデザインも最初からそのようにできていますね。

というわけで、今回の帯も帯合わせは紬系だけになります。

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いちばん上の写真は、宮田織物の本塩沢を合わせてみました。本塩沢は塩沢を名乗る織物のうち、紬ではなくお召の方で、単衣で着るとお洒落の方です。これは全体が経緯絣の作品です。

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写真2番目は、秋山真和さんの「綾の手紬」を合わせてみました。帯合わせについ使ってしまう私のお気に入りです。私は女性の着物は着ませんが、着ない人はこういう色が目にバシッと来て、綺麗だけど着にくそうな着物が好きなものです。

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写真3番目は、大城誠光さんの琉球絣を合わせてみました。絹糸(玉糸でも真綿糸でもないという意味)で織られた大島みたいな手触りの着尺です。民芸的な感じが好きな人は、紬のボタッとした感じの方が良いかもしれませんが、大島みたいな感じの方が実際にはかっこよく着られるかもしれませんね。

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写真4番目は、真栄城興茂さんの琉球美絣を合わせてみました。創作的な紬として最も早く創始された(大正時代、明治までは貢納布制度があったので沖縄に創作はない)絣です。木綿と駒糸がありますが、これは木綿地で「美絣」の名の通り、絣のグラデーションが美しいです。

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写真5番目は、大城哲(大城織物工場)さんの琉球絣を合わせてみました。大城織物工場は南風原に有って、カメ→清栄→哲(さとし)と続きます。これは哲さんの時代で、グバンの中に絣がある手縞の様式。

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写真6番目は、紺仁の「片貝布」を合わせてみました。紺仁の「片貝木綿」は機械織のリーズナブルな値段の木綿の着尺で、とてもお洒落で合理的な着物です。しかしなんと、紺仁さんは機械織の木綿を大量に売りながら、じつはそのホンモノバージョンも作っていたのです。デザインは、機械織の木綿に比べるとお洒落ではないかもしれません。しかしホンモノとしか言いようのない真綿の織物なのです。

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写真7番目は、大城カメ(大城織物工場)さんの琉球花織の着尺を合わせてみました。一見、読谷花織に見えますが、産地が読谷ではなく南風原ですから、浮織の着物ということになります。ラベルとしては「琉球花織」となっています。どちらが良いかと言えば、値段的にはこちらが少し安いです。ホンモノ感は読谷の方がありますね、しかしこちらには大城カメ的なセンスの良さがあります。好き好きで。
[ 2017/07/05 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

東京刺繍の帯の続き

第三千七百七十五回目は、東京刺繍の帯の続きです。

個別の模様の近接の続きです。このような作品の魅力は、個別の模様ですから、今日は細かいところを見てください。

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いちばん上の写真は、お太鼓にある個別の模様の近接です。車輪がついている大型の楽器です。撥を持っているので太鼓なのでしょうか。ヨーロッパの街の縁日の風景だと思いますが、そのような意匠では、音が出る楽器を持った人を含めると、見た人が音を感じるようになります。

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写真2番目は、お太鼓にある個別の模様の近接です。子供も欠かせない要素ですね。子育てを経験した人は感情移入しやすいのでは。

模様の表現ですが、どの模様も色糸を使って面を埋める刺繍をしつつ、金糸のまつい繍で細部の線表現をしています。面を埋める刺繍はすべて地の目に沿っていますが、生地が垂れない配慮でしょうか。面を埋めることでボリュームを感じさせるのと、線表現で細密さを感じさせるという対照的な2つの技法で、絵として魅力にあるものにしているのです。

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写真3番目は、お太鼓にある個別の模様の近接です。ガス灯で、梯子はガスに点火するためのものでしょう。芸能人のヘタウマなえのような表現ですが、これが温かみを生んでいます。

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写真4番目は、腹文にある個別の模様の近接です。コンバーチブルの自動車でしょうか。これだけは線表現が多いですね。

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写真5番目は、腹文にある個別の模様の近接です。自動演奏の機械でしょうか。この模様は綿を埋める表現が多いです。線表現が多い自動車の隣にあるので、この2つでバランスをとっているんじゃないかと思います。なんでも一生懸命たくさん仕事をすればよい、という発想だととても高いものになってしまいます。一生懸命やるところ、少し休むところ、緩急自在っていうのも刺繍作家のセンスですね。

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写真6番目は、腹文にある個別の模様の近接です。私はこれがなんだかわからないんですよ。

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写真7番目は、お太鼓の模様の裏側です。
[ 2017/06/13 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

東京刺繍の帯

第三千七百七十四目は、東京刺繍の帯を紹介します。

今回はメーカー名やブランド名はありません。実際の制作は東京のどこかで行われていて、それを問屋さんが集めて、主に他の問屋さんに販売しています。そのような問屋を仲間問屋と言います。東京にも知られている刺繍工房はありますが、そういう工房を退職したり卒業したりした人が、自宅で内職として制作することもありますから、誰がつくっているのかわからないのです。

刺繍の工房で働いている人は女性が多いですから、結婚や妊娠を契機に辞めて、子育てが終わった後に自宅で始めるというケースが多いのではないでしょうか。工房は経ず問屋と直接契約し、問屋は制作者の氏名は明かさないのです。それが分ったら小売屋やユーザーが直接仕事を頼んでしまい、問屋が成り立ちませんから。

そのようなことができるのが、刺繍という技法の特徴なのです。友禅であれば水洗とか蒸しとか一定の設備が要りますし、大量に残った染料を捨てるばあいは工業地域あるいは準工業地域でなければなりません。地染めをするには長さ12mの作業場が無いとムラになってしまいますしね。その点、刺繍は突き詰めれば針だけですから。場所も要らない、元手も要らない、仲間も要らない、自分の技術とセンスだけなのです。

というわけで、この作品も誰がつくっているのか全然わかりません。ただ分かっていることは、元締めになっている問屋が東京にいて、京都の問屋にも貸し出していることです。京都の問屋、例えば野口でこんな作品を見たら、刺繍の本場の京都には面白いものがあるなんて思ってしまいますが、じつは東京だったということもあるわけです。

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いちばん上の写真はお太鼓です。縁日に移動サーカスが来たような楽しい雰囲気です。ヨーロッパのお祭りだと移動式の回転木馬が来たり、大道芸人が来たりしますよね、そんな情景でしょうか。

個人で創作している人にとって、いちばん難しいことは魅力のある図案を手に入れることだと思います。技術は工房で鍛えているので、多少歳を取ったって劣化することはないでしょう。デザインも自分が感動したものをそのまま表現すれば良いものができるでしょう。しかし業として日々制作していくときに、毎回、人を喜ばせる図案を思いつき続けることができるでしょうか。

野口や洛風林のようなセンスが売りの会社は、展示会では毎回、みんなの期待を裏切らないデザインを発表し続けます。それはデザインを生み出す組織を持っているか、複数のプロのデザイナーと契約していて、デザインについてしっかりお金を払っているからだと思います。個人はそれができません。お風呂で思いつけばタダですが、毎回思いつくとは限りませんから。

今回の作品はとても楽しい雰囲気で私は大好きですが、こういうのって、じつは何十本の中から選んでいるんですよね。この仲間で、前回良いなと思ったのは、いろんな種類の鳥、その前は香水瓶です。じつは1年に1回も出会ってないのです。

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写真2番目は腹文です。

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写真3番目から下は、個別の模様に近接してみました。

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写真4番目はお太鼓にある個別の模様です。汽車です。

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写真5番目はお太鼓にある個別の模様です。飛行機ですね。

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写真6番目もお太鼓にある個別の模様です。気球で飛んでいる人でしょうか、大道芸人でしょうか。
[ 2017/06/12 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)