倉部さんが制作した野口の付下げの細部

第四千百回目は、倉部さんが制作した野口の付下げの細部です。

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いちばん上の写真は、孔雀の近接です。鳥の胴は金糸の駒繍、雨覆も金糸の駒繍、風切羽根は一目置きに刺繡しているので菅繍のようですが、2方向から交わるような表現になっています。尾羽はまつい繍ですね。

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写真2番目は同じ箇所の裏側です。

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写真3番目は、孔雀のもっと近接です。胴の部分の金駒は面をびっしり埋める表現です。平面的ですが強い表現です。それに対し、雨覆は金駒ながら細い糸で動きのある表現です。風切羽根の刺繍の仕方も創作的ですが、雨覆の間に段差があるのを上手く表現しています。尾羽のまつい繍は、羽毛のヒラヒラ感を表現するのに成功しています。

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写真4番目は同じ箇所の裏側です。金駒の留め糸は朱色で、動物の温かみを感じます。

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写真5番目は、マエミの下の方にある更紗風の植物文の近接です。2つの花のうち1つは金駒、もう1つは菅繍です。菅繍は遠くにあるように見えるので、2つの花の前後関係が明確になり、絵に立体感が生じています。

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写真6番目は、植物文のさらに近接です。葉の表現は3種類です。近景を表す金駒、中景を表す平繡、遠景を表す菅繍で、3つの技法のおかげで絵が平面的にならないのです。
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[ 2018/05/08 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

倉部さんが制作した野口の付下げ

第四千九十九回目は、野口の付下げを紹介します。制作したのは倉部さんです。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は胸です。

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写真5番目は、マエミの近接です。
[ 2018/05/07 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

野口の付下げ(実際の制作は倉部さん)の細部

第四千九十回目は、倉部さんが制作した野口の付下げの細部です。

今日は、倉部さんの刺繍の技を近接で見てみます。刺繍というのは、手間がかかって本来高価なものですが、人件費の安い海外で制作することも行われてきました。最初は台湾と韓国、国交回復後は中国、今は中国の人件費が上がったのでベトナムが多いです。そのようなものは京繍に比べると1/10とか1/100の値段で販売されます。

そんな競争環境の中で京繍が生き残るのは、100倍払っても良いと思えるような圧倒的な技術と芸術性がなければなりません。それがどんなものか、今日は細部を見てみます。

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いちばん上の写真は、鳥のいる風景に出来るだけ近接してみました。鳥は全て金糸で刺繍されていますが、それでは輝くばかりで平面的になってしまいます。そうならないために刺繍の技法をいろいろ変えて、色は金で同じでも立体的に見えるようにしているわけです。

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写真2番目は、マエミの下の方の鳥のいる風景に出来るだけ近接してみました。鳥の頭と胴の部分は駒繍で、留め糸は朱色です。刺繍糸は金糸ですが、留め糸が暖色であるために、温かみのある金色になっています。

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写真3番目は、後姿の鳥のいる風景に出来るだけ近接してみました。羽根はまつい繍です。駒繍は留め糸で生地に押し付けるように繍うので平面的ですが、まつい繍は押し付けないので、金駒部分に比べてふわっとして、羽根らしく見えるわけです。

鳥の羽根の一部は、菅繍という一目置いて繍う技法になっています。これは後退して見える技法で、立体感を出すのに役立っています。

目の部分はマンガのように、目の中に光があります。これで表情が生まれました。

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写真4番目は、後姿の鳥を裏側から撮ってみました。これで技法がよくわかります。本金糸かポリエステルフィルムかの見分けは、糸の端を探して、芯糸の周りに巻き付けてある糸を少し解いてみるとわかります。裏が白ければ本金、裏も金ならばポリエステルです。

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写真5番目は、木の枝と花をできるだけ近接してみました。椿は照葉樹なので、陽光が当たると光ります。だから葉の何枚かは金糸だけで表現されています。その葉は陽光が当たっているわけですね。そうでない葉は葉脈が金糸で表現してあります。

木の枝は、まつい繍でふわっと刺繡されています。木の枝の丸みや触感の表現です。
[ 2018/04/28 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

野口の付下げ「」(実際の制作は倉部さん)

第四千八十九回目は、野口の付下げ「」を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

椿の枝に鳥がとまっているという意匠ですが、それを全て高価な倉部さんの刺繍だけで表現しているということに価値がある作品です。箔も併用すれば、もっと低コストでストーリー的な展開もできるのですが、あえて刺繍だけにしているために、鳥は3羽、枝は最低限です。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。前姿は、鳥2羽、枝は3本です。作品中で、花は全て蕾です。これは鳥を主役にするためでしょうか。それとも刺繍のコストを減らすためでしょうか。そうでなければ本歌に当たる絵画が蕾だけで、それをそのまま写したのかもしれません。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は、マエミ上の鳥です。

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写真4番目は、マエミ下の鳥です。

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写真5番目は胸の枝です。

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写真6番目は、後姿の鳥です。
[ 2018/04/27 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

東京刺繍の名古屋帯

第四千三十五回目は、東京刺繍の名古屋帯を紹介します。

東京刺繍(江戸刺繍)で有名な作家としては竹内功さんがいます。私にとっての東京刺繍というのは、千代田染繍がつくる黒留袖で北秀が扱っていたのですが、値段は200万円~350万円もしました。それは凄みさえ感じるものでしたが、下職として実際に制作していたのは竹内功さんだったようです。

今日紹介するこの刺繍の帯は、北秀の元社員から仕入れたもので、作風も技法もその流れに有るものですが、残念ながら千代田染繍や竹内功さんが直接制作したものではありません。刺繍というのは友禅のように設備が要らずアパートの一室でもできますから、弟子の誰かであったとしても誰かはわかりません。取り扱う問屋は、自分が中抜きされることを恐れて絶対に教えないんですよね。

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いちばん上の写真はお太鼓です。吹寄せの様式で、輪郭線は使わず並べ方だけで遠山の意匠がつくってあるものです。

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写真2番目は腹文です。腹文の模様は片側だけです。日本製の刺繍や爪掻綴はたいていこのような様式になっています。

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写真3番目は、お太鼓の近接です。地色も刺繍の配色も、地味派手具合がちょうど良いところです。

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写真4番目は、お太鼓のもっと近接です。

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写真5番目は、お太鼓の別の箇所の近接です。

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写真6番目は、腹文の近接です。
[ 2018/03/04 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)