千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」(実際の制作は倉部さん)の続き

第三千七百三十三回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」(実際の制作は倉部さん)の続きです。

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いちばん上の写真は、お太鼓の近接でメインの模様です。細かいところにかなり近接した画像です。金描きで写生的な表現をしています。塩瀬の生地の目と比較していただくととても細密なことがわかります。この職人さんの技術は凄いですね。

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写真2番目は、お太鼓の近接で色紙の重なる部分です。色紙の輪郭線は、端正というよりも意外と手描き感のある温かみのある線です。青い色紙には、振り金砂子(箔の切り屑を細かくして竹筒に入れ、オトシ刷毛で揉み落として砂子状に撒くもの)またはオトシぼかし(金網を使って霧状に金粉を撒く方法、現在はエアブラシも多いのではないか?)という技法が多用されています。一方、茶の色紙には切箔といわれる、いろいろな形に切った箔を撒く技法が使われています。

今ここで、「切箔」「振り金砂子」「オトシぼかし」という3つの金箔の技法を紹介しましたが、これらは大きさの違いで、たいていは併用されることが多いです。箔を貼るときは模様の形に切って不要な部分が生じますが、それを細かくして切箔として使い、さらに細かくして金砂子として使い、さらに細かくしてオトシぼかしとして使うのでしょう。たいていすべて併用して1つの作品になっているものです。

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写真3番目は腹文の近接です。書道で文字がかすれた部分を飛白といいますが、この作品では金描きの松の枝で意識的に飛白表現をしています。「高砂」では、図像学的には老松であるべきですが、この作品では若松になっています。実際に作品を見ると、この部分は老松の曲がりくねった枝を描くよりは、若松の方がお洒落ではないかと感じます。あまり「高砂」のテーマに忠実すぎると結婚式専用みたいになってしまいますしね。

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写真4番目は、お太鼓の裏側です。金描きは裏に透けないので、友禅部分だけが見えます。金描きをする前の工程ではこんな感じだったんですね。

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写真5番目は、色紙の青を生かした帯合わせをしてみました。合わせた着物は松枝哲哉さんの久留米絣です。藍が明るいのが特徴で、色に共通性が有るので選んでみました。
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[ 2017/05/02 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」(実際の制作は倉部さん)

第三千七百三十二回目の作品として、千切屋治兵衛の名古屋帯「高砂」を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

能の演目である「高砂」をテーマにした作品です。高砂のストーリーはこんな感じです。阿蘇神社の神主が京に上る途中の播磨の国高砂の浦で、松の根元を掃き清める老夫婦に出会います。二人は、この松は高砂の松といい、摂津の国住吉にある住の江の松と合わせて「相生の松」と呼ばれていると語ります。さらにこの二人は高砂と住吉の相生の松の化身であると告げるというものです。

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いちばん上の写真はお太鼓です。相生の松の化身である2人は省略され、持っている道具だけで象徴的にあらわされています。その道具は色紙取りで表現されていますが、色紙は夫婦なので2枚です。上の青い色紙は2人がいる高砂の浦の景色ですから、下の茶色い色紙は住吉の景色なのでしょう。今2人は高砂に居るので、こちらは留守なのでしょうか。

能のストーリーでは、神主は老夫婦の後を追って舟を出し、高砂の浦から住吉へ向かいます。住吉の岸では住吉明神が姿を現し、真って長寿を寿ぎます。下に有って見えない色紙には、住吉明神が描かれるのかもしれませんね。

色紙の外には2本の松が描かれていて、これが高砂の松と住吉の松だろうと見当が付きますが、能の内容と違うところは化身の姿が老夫婦なのに松が若松であることです。まああんまり細かいこと言わないで、というところでしょうか。

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写真2番目は腹文です。金描きによる霞と松です。意味のあるお太鼓の模様に対し、さらっと流す感じです。

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写真3番目は、お太鼓の近接です。この作品は色紙の青がすごく綺麗なのですが、近接してみるとそれほど鮮やかな青ではないです。外の茶と中の金に挟まれているという配色の妙で、美しい青に見えているのです。

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写真4番目は、腹文の近接です。

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写真5番目は参考図版です。安藤広重による双福の作品で、数十年前の図録に有ったもので、解説によると広重が晩年に逗留した天童市に伝来したとあります。これが高砂の基本の図像で、省略された元の人物はこんな感じだったんですね。
[ 2017/05/01 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

花也の刺繍と白揚げ友禅の名古屋帯

第三千七百六回目の作品として、花也の刺繍と白揚げ友禅の名古屋帯を紹介します。

刺繍は、先日の付下げと同じ鹿児島寿蔵の人形の衣装に使われている模様に想を得たものです。白揚げ友禅は、寺などにある石畳を意匠化したものではないかと思います。ただ「石畳文」または「石畳模様」と言ってしまうと市松模様と同じ模様を意味することになってしまうので、名前を付けにくいです。

石畳文と市松模様は同じパターンですが、私のばあいは、遠州緞子のように佐野川市松より前のものに付いては「石畳文」、佐野川市松以後のものについては「市松模様」と分けて表記しています。

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いちばん上の写真はお太鼓です。刺繍は5個でお太鼓の中に納まりますが、石畳の模様はお太鼓をはみ出しています。無駄なようですが、お太鼓の中だけで納めようとすると絵が縮こまることがあるので、このようにはみ出す表現をしたのだと思います。ドガの競馬の絵でも、わざと馬が途中で途切れる表現をしたものがありますね。

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写真2番目は腹文です。刺繍は片側だけですね。実際に締める時は折るわけですが、友禅は見えないところに描いて無駄にしても、コストの高い刺繍は惜しいわけです。

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写真3番目は近接です。石畳部分を見ると、四角い模様の縁に乳白色の部分があります。ちゃんと糊糸目を置いているようです。

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写真4番目は近接です。

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写真5番目は近接です。他の箇所では刺繍と友禅が重なることはありませんでしたが、全体でここだけ模様が重なっています。模様を多く見せるには、重ねないで面積を稼ぐ方が良いですが、多少は面積を犠牲にしても模様を重ねた方が、意匠に遠近感が出て奥行きが生まれます。

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写真6番目は裏側です。刺繍の技法がわかります。
[ 2017/04/05 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の着尺の帯合わせ

第三千六百九十二回目は、千切屋治兵衛の着尺の帯合わせです。

今日は染めの名古屋帯を合わせてみます。今回の着尺は、縮緬と比べれば薄手でありながら縮緬よりむしろしっかりした生地なので、単衣にも使えそうな気がしますが、その一方で晩秋にちょうど良いような焦げ茶です。チグハグとも言えますが、帯合わせで面白い使い方ができるとも言えますね。、

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いちばん上の写真は、野口の友禅の名古屋帯を合わせてみました。しぼの大きい縮緬地を使っています。秋に着ることを想定してみました。

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写真2番目は、一の橋の金、銀描きの名古屋帯を合わせてみました。本歌の作者は俵屋宗達で、光悦の謡本の下絵です。このばあいの「下絵」は和歌の下に描いてある絵です。銀描き部分は馬にも見えますが、安心してください、ちゃんと全部鹿です。鹿には季節はありませんが、楓とセットで描かれることが多いので秋のイメージですね。

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写真3番目は、千切屋治兵衛の友禅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは野村さんで、生地は紬地です。

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写真4番目は、千切屋治兵衛の友禅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんで、生地は塩瀬地です。描かれているのは柘榴と桑です。柘榴は花は初夏ですが実は秋です。輸入品が多いので意味がないかもしれませんが、八百屋で見るのは秋の後半ですね。

一方、桑は染織関係ではカイコの餌でしかないので、実について論じる人はいませんが、春だそうです。春と秋のコンビで季節に幅広く対応できる意匠だったのです。パッと目に入るのは柘榴のみですし、地色も秋っぽいので、秋が主、春はアリバイづくり程度でしょうか。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の友禅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは藤岡さんで、生地は塩瀬地です。焦げ茶色でも春用として使ってみました。ペパーミントグリーンと焦げ茶の配色は綺麗ですよね。

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写真6番目は、花也の友禅の名古屋帯を合わせてみました。これは春使用、水色と焦げ茶の配色です。

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写真7番目は、秀雅の友禅の名古屋帯を合わせてみました。実際に制作したのは大松です。花は菊が多く秋ということになりますが、綺麗な水色地で華やかな印象なので、吉祥としての菊で季節はないと言うことでしょう。
[ 2017/03/22 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「斜め変わり波に寿蔵文」の細部

第三千六百七十四回目は、花也の付下げ「斜め変わり波に寿蔵文」の細部です。

いつも紹介している倉部さんの刺繍に比べれば、刺繍の量が多いわりに値段がリーズナブルで、お得感が強い作品です。ただし刺繍の量は多いですが全て同じ形で、後姿に珍しい技法を発見した、というような楽しみはありません。

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いちばん上の写真は、刺繍部分の近接です。

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写真2番目は、上の刺繍をルーペで見てみました。

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写真3番目は、銀糸も使った刺繍の近接です。

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写真4番目は、上の写真をルーペで見てみました。

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写真5番目はさらに拡大してみました。

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写真6番目は裏側です。
[ 2017/03/04 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)