千切屋治兵衛の名古屋帯「枝垂桜と色紙」(実際の制作は倉部さん)

第四千二十回目は、千切屋治兵衛の名古屋帯「枝垂桜と色紙」を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

桜の時期のちょっと前に桜の帯を締めるためには、呉服屋さんで見るのは今がもう限度ですね。今日紹介するのは、倉部さんの箔の帯で、色紙の中に描かれているのは、現代では結婚式の三々九度など神道でしか使わない銚子です。ここでは両口のものですね。

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いちばん上の写真はお太鼓です。作品の主要なテーマは地色の青と金のコントラストだと思います。実際にこんなに青だけの空を背景に桜を見ることは無いですが、どんな桜が綺麗だろうと考えて突き詰めた時、倉部さんに青と金のイメージが浮かんで来たんじゃないでしょうか。

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写真2番目は腹文です。写真の青がちょっとくすんでしまいました。上のクリアな色の方が本当です。

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写真3番目は、お太鼓の近接でメインの色紙部分です。両口銚子は飲むお酒ではなく神道の儀式のイメージです。桜を神聖なものに見せているんでしょう。色紙の色は地色より淡い青で友禅され、青の濃淡を見せています。

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写真4番目もお太鼓の近接で、色紙のちょっと上です。今回の桜の金描きは、青の地色に合わせたのか、わりと銀色に近い金ですね。あらゆる金箔はすべて銀を含んでいます。そうしないと伸びないんですね。その銀の含有率を変えることで、黄色っぽい金や白っぽい金がつくれます。

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写真5番目もお太鼓の近接で、色紙のちょっと下です。

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写真6番目は腹文の片側の近接です。お太鼓の色紙は2枚が重なっていて、上は金描き、下は切箔(截箔とも)と振り金砂子が少しだけ覗いていました。腹文では下の色紙がメインになっています。切箔と振り金砂子は夜空の星に見え、箔ぼかしは春霞の形をしていますね。ここで桜の背景の空を見せているわけです。
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[ 2018/02/15 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「金彩源氏車と葵」(実際に制作したのは倉部さん)の細部

第三千九百十回目は、一の橋の付下げ「金彩源氏車と葵」(実際に制作したのは倉部さん)の細部です。

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いちばん上の写真は、前姿の丸い源氏車の上にある葵の刺繍です。場所はマエミです。倉部さんの刺繍は、蔓を表現するときに日本画家が写生するように曲がっています。

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写真2番目は、上と同じ箇所のさらに近接です。葵は、輪郭だけの表現もありますし、中を埋める表現もあって強弱がついています。中を埋める表現をする場合は色も変えていて配色も上手です。

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写真3番目は、前姿の丸い源氏車の左にある葵の刺繍です。場所はオクミです。

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写真4番目は、菱形の源氏車の近接です。菱形の源氏車の輪郭は縁蓋を切っています。中の疋田は、金彩用の汎用型だとは思いますが、疋田の形も1つ1つ違っていて手描きなのかわからないぐらいです。見ていて面白いですね。

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写真5番目は、マエミの下の方にある葵の刺繍です。

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写真6番目は、上の刺繍の裏側です。

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写真7番目は、後姿の丸い源氏車の上にある葵の刺繍です。
[ 2017/10/27 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「金彩源氏車と葵」(実際に制作したのは倉部さん)

第三千九百九回目の作品として、一の橋の付下げ「金彩源氏車と葵」を紹介します。実際に制作したのは倉部さんです。

今回の作品を眺めていると、多くの人は源氏物語の葵の上と六条御息所と車争いの場面(「葵」)だと気が付くのではないでしょうか。その場面というのは、妊娠した葵の上は牛車で葵祭りの見物に出かけるが、すでに混雑していて牛車を停める場所がない、そこで従者たちは他の牛車を押し退けて停めようとするが、そこにあったのは六条御息所の牛車で、両者の従者が乱闘することになってしまい、六条御息所の牛車が破損してしまうというものです。

この件で辱めを受けたと感じた六条御息所は、生霊になって、夕霧を出産した直後の葵の上は憑り殺してしまいます。ようするに駐車場での喧嘩をテーマにした着物ということですが、そういってしまうと身も蓋もないですねえ。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

丸と菱形の2種類の源氏車が重なるように接していて、周囲に葵が刺繍されているという意匠です。源氏車が重なる部分では、丸い方が上にかぶさっているので、丸い方が菱形を押し退けているように見えます。

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写真2番目は後姿です。後姿は丸い源氏車だけです。地色は基本は焦げ茶なのですが、少し赤みもあり、テーマに沿った艶っぽさもあります。

六条御息所はまだ未練のある源氏の姿をこっそり見ようと思っていたのに対し、こともあろうに現在の妻の葵の上の牛車に無理にどかされ、お忍びで来ていたことも相手に露見してしまうという散々な状況なのです。いちばん年上の六条御息所もまだ29歳ですし、基本は色恋沙汰なのですから、落ち着いた焦げ茶ではないのでしょうね。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は胸です。
[ 2017/10/26 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「彫金唐草」(実際に制作したのは倉部さん)の続き

第三千八百六十四回目は、千切屋治兵衛の付下げ「彫金唐草」(実際に制作したのは倉部さん)の続きです。

今日は細部を拡大してみます。

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いちばん上の写真は、立体感がわかるように斜めから撮ってみました。金糸だけの模様ですが、金の色も輝度も糸も膨らみも変化があります。そのために模様が反復であっても退屈しないのだと思います。

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写真2番目は、斜めから近接で撮ってみました。金の色や輝度や糸の立体感が違うのは、糸の太さの違いや刺繍の技法の違いだと分かります。模様が反復的だからこそ、技法にバリエーションが必要なんですね。結局職人さんの修業の結果ということか。

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写真3番目は、ルーペで拡大してみました。いちばん立体的に見えるところは、太い本金糸による駒繍部分です。形も塊で存在感があります。さらに留め糸を朱色にして目立つようにしています。金の色が同じでも留め糸を朱色にすると金の色が派手に見えるのです。

一方、生地の目に沿って一目空けて繍う技法を菅繍といいます。菅繍は生地に密着しているように見えるので、刺繍というより織物のようです。そのため立体感を感じず後退しているように見えます。

この作品では、前に出てくるように見える金駒と、後ろに下がっているように見える菅繍の間に、生地の目に沿って面を埋める金糸の刺繍もあって、3段階で立体感を表現するようになっています。

また一部に、刺繍の上にさらに刺繍を重ねるようにまつい繍をしている箇所がありますね。葉脈のようですが、それも立体感の演出に貢献しています。

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写真4番目は、ルーペで拡大してみました。ここも3段階で立体性を表現しています。左端には縁蓋による印金の表現もあります。刺繍ではないので平面ですから、4段階の立体表現になります。

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写真5番目は、ルーペで拡大してみました。

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写真6番目は、裏側から撮ってみました。赤い糸が見えるのは、朱色の留め糸ですから、立体的な駒繍の裏側です。
[ 2017/09/11 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の付下げ「彫金唐草」(実際に制作したのは倉部さん)の続き

第三千八百六十三回目は、千切屋治兵衛の付下げ「彫金唐草」(実際に制作したのは倉部さん)の続きです。

今日は細部を紹介します。訪問着の模様には、各所に違う模様が付いていて着物全面を使って物語が展開していくものと、同じ模様が繰り返して行くものtがあります。前者は見ていて楽しいですし、後者は神殿の列柱のような繰り返しの美があります。この作品はもちろん後者で、同じパターンが前姿にも後ろ姿にも袖にも付いています。

倉部さんのこのシリーズは過去に何度か紹介していて、たとえば2015年1月1日(二千九百五十回)や2017年2月15日(三千六百五十七回)で取り上げています。2015年1月1日の作品については、マエミや袖など場所によってすべて模様が違い見る楽しみがあります。しかし作る側の事情を考えると、模様が変われば余白があって手が抜ける箇所もあるのに対し、この作品のように全部同じだと手を抜く箇所がなくコストの節約ができません。

しかし今回の写真の撮影では、近接で撮った写真を後で見ると、どの箇所もみんな同じなので袖なのか身頃なのかわからず苦労しました。というわけで適当に載せてあります。

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いちばん上の写真はどこかの箇所の近接です。

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写真2番目は、どこかの箇所のさらに近接です。

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写真3番目は、マエミとオクミがつながる辺りの近接です。

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写真4番目は裏側です。
[ 2017/09/10 ] 繍箔 | TB(0) | CM(0)