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一の橋の染め帯「狗張り子」の細部

第三千八百八十九回目は、一の橋の染め帯「狗張り子」の細部です。

描き絵の欠点は、顔料を絹地に固定するための接着剤によって生地が変質することです。ゴワゴワになるということですね。掛け軸として飾るだけの日本画なら問題ないですが、、着物のばあいは体の動きに素直についてこなくなるし、畳むと筋が付いてしまうから大問題です。もしその欠点が無ければ友禅は必要なく、発明されることもなかったでしょう。

この作品は名古屋帯として制作されています。帯のお太鼓と腹文は使っている時も仕舞っておく時も生地を曲げることはありませんから、ほぼ支障はないわけです。

絵心はあるが染色家でない人が着物の制作をする場合、友禅ではなく描き絵(たいていはアクリル絵の具)で制作します。友禅は筆でなく糊筒を使うため、単に絵の才能があるというだけではできず、専用の訓練を受けなければできませんし、蒸しや水洗の工程があるので専用の設備が必要だからです。そのため、友禅より低コストで作られた「まがい友禅」というのは昔からあるのです。この作品は「まがい友禅」なのか、それとも魅力的な創作品なのか、今日は細部を見ていきます。

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いちばん上の写真は、狗張り子の近接です。背中の飾り部分は箔使いですが、輪郭がくっきりして端正です。これは縁蓋を切っているのでしょう。高度な仕上がりですし、私がいちばん好きな部分です。

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写真2番目は羽子板です。模様部分は全て輪郭が金彩で括られています。それによって画面が華やかになっているわけですが、それと同時に絵画ではなく装飾になっているわけですね。それと染色では大事なことですが、金で全部を括ってしまうと、元に糸目があったかどうかわからないから友禅と勘違いを誘うということですね。

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写真3番目は羽子板の近接です。この作家はかつて一の橋で神坂雪佳のシリーズを制作していました。当時、神坂雪佳が流行っていて各社とも友禅で神坂雪佳の写しを創りまくっていたのですが、いずれも友禅であったために本歌に無い糸目があって、それが微妙な雰囲気の違いになっていました。この作家のばあい描き絵で糸目が無いですから、いちばん神坂雪佳に肉薄していました。

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写真4番目は羽根です。

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写真5番目は毬です。

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写真6番目はもう1つの毬です。
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[ 2017/10/06 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

一の橋の染め帯「狗張り子」

第三千八百八十八回目の作品として、一の橋の染め帯「狗張り子」を紹介します。

今日の作品は友禅ではなく描き絵によるものです。絹地に絵画的な表現をする場合は、いきなり染料で描いては滲んで絵になりませんから、模様の輪郭を防染する必要があります。それを蝋で行うのは蝋染、糊で行うのは友禅染、型で行うのは型染、絞りで行うのは辻が花染です。その一方、染料に粘るものを混ぜて滲ませない方法もあります。それが描き絵で、正倉院の時代からあります。

日本画は、粉末状の顔料を膠を接着剤として絹本に描くものですが、染色の描き絵も同じ原理です。現代であればアクリル絵の具で絹地に直接描いてしまうこともできます。アクリルというと商品価値が無いと思うときは、樹脂系顔料なんて言いますけどね。

今回の作品は、友禅ではなく描き絵によるもので、染色というよりも日本画として描かれたものです。作者は染色家として友禅もできるのですが、一の橋では描き絵の作品だけを扱っています。一の橋の下職は、友禅分野では安田などいくらでもすごい人がいるので、この人は特色のある分野を担当しているのでしょう。

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いちばん上の写真はお太鼓です。

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写真2番目は、お太鼓の少しだけ近接です。

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写真3番目は腹文です。

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写真4番目は腹文の片側です。

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写真5番目は腹文の反対側です。
[ 2017/10/05 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「菊の葉」の続き

第三千八百七十三回目は、花也の付下げ「菊の葉」の続きです。

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いちばん上の写真は、この作品の元になった小袖です。今回の付下げは菊の葉だけですが、本歌は花もありました。上半身の半分を覆うような巨大な花弁があって、その上にたくさんの花と葉があって、しかもその花と葉は、別々に列を作って重なっているという普通では思いつかない図案です。

最盛期の小袖の意匠は奇想天外です。これにくらべると御所解といわれるような模様は平凡です。御所解のような模様は今は人気がありますが、あれは小袖の劣化した姿にすぎないと思います。

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写真2番目は細部を撮ってみました。葉が重なるところは同じですが、本歌は葉は写生的に描かれ、花が疋田でした。この作品では花がありませんから、疋田は葉にも使われています。なおこの作品の疋田は型疋田ではなく、手描きの疋田です。

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写真3番目は、マエミトオクミの縫い目辺りの近接です。葉の表現の全種類見ることができます。

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写真4番目は、友禅による表現、2種類です。

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写真5番目は、描き疋田2種類の近接です。葉の模様の形を糊伏して防染し、普通の染料と金彩とで描いています。疋田の表現の方法として、狭い面積の模様の中を疋田にする場合は、中井淳夫さんはその都度わざわざその形の型を作ったと言われています。普通は、わざわざその形の型を作るよりは、模様の形だけ防染し中は描き疋田にした方が合理的です。

合理的な方法として、疋田を彫った四角い汎用型を作っておいて、縁蓋で防染した模様の形の中を染める方法があります。私はそれでも良いと思いますが、中井さんはその都度形に合わせて作ったということです。花也さんはそういう時は手描きします。手描きの味というのがありますから(よく見ると絞りの失敗も描いてある)、そういうコストの使い方は合理的ですね。

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写真6番目は、友禅と描き疋田の境目を撮ってみました。描き疋田の周囲には糊糸目があって、防染工程がわかります。
[ 2017/09/20 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「菊の葉」

第三千八百七十二回目の作品として、花也の付下げ「菊の葉」を紹介します。

菊がテーマですが、花が無くて葉だけの付下げです。袷としても秋の単衣としても着られそうです。模様のつながりが複雑なので、本来であれば仮絵羽にして制作すべきものですから、実質的には訪問着ですね。

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いちばん上の写真は前姿(マエミ+オクミ)です。彩色を伴う糊糸目の友禅、線描き、2色の描き疋田の4種類からなっているけっこう複雑な重なりです。元のモチーフは菊の葉という1種類ですから、その変奏として展開していくわけです。繰り返しの美と変化のある美の両方を兼ねています。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は袖です。

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写真3番目は、もう片方の袖です。

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写真5番目は袖です。
[ 2017/09/19 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「霞に千鳥」の続き

第三千八百十五回目は、花也の付下げ「霞に千鳥」の続きです。

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いちばん上の写真は、マエミの千鳥の近接です。

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写真2番目は、線描きの千鳥も近接してみました。糊筒で線描きしたものですが、几帳面に描いてあります。筆で描くならもっと表現方法があるかもしれませんが、小さいものですから糊筒で描くならきちんと描くのが精いっぱいだと思います。

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写真3番目は、江戸時代後期の白揚げの小袖に描かれた千鳥です。

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写真4番目は、花也の別の作品(夏の染め帯)の千鳥です。今回の千鳥は彩色していますが、別の作品では白揚げで描いたものの方が多いです。全体が白揚げで、金で括り、頭部や翼の一部を色挿しした様式は、江戸後期の小袖を踏襲したものでした。

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写真5番目は、毎田仁郎の色留袖に描かれた千鳥です。加賀友禅の大御所ですが、ゆるキャラ的にかわいい千鳥を描いていました。

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写真6番目は、中町博志の訪問着に描かれた千鳥です。モダンで革新的な表現で知られた中町博志ですが、千鳥の足の形を見てみると、意外にも江戸時代の小袖の様式をそのまま踏襲しているんですね。
[ 2017/07/23 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)