2017 07123456789101112131415161718192021222324252627282930312017 09

花也の付下げ「霞に千鳥」の続き

第三千八百十五回目は、花也の付下げ「霞に千鳥」の続きです。

IMG_15122.jpg
いちばん上の写真は、マエミの千鳥の近接です。

IMG_15192.jpg
写真2番目は、線描きの千鳥も近接してみました。糊筒で線描きしたものですが、几帳面に描いてあります。筆で描くならもっと表現方法があるかもしれませんが、小さいものですから糊筒で描くならきちんと描くのが精いっぱいだと思います。

IMG_27832.jpg
写真3番目は、江戸時代後期の白揚げの小袖に描かれた千鳥です。

img-50102.jpg
写真4番目は、花也の別の作品(夏の染め帯)の千鳥です。今回の千鳥は彩色していますが、別の作品では白揚げで描いたものの方が多いです。全体が白揚げで、金で括り、頭部や翼の一部を色挿しした様式は、江戸後期の小袖を踏襲したものでした。

IMG_27992.jpg
写真5番目は、毎田仁郎の色留袖に描かれた千鳥です。加賀友禅の大御所ですが、ゆるキャラ的にかわいい千鳥を描いていました。

IMG_28152.jpg
写真6番目は、中町博志の訪問着に描かれた千鳥です。モダンで革新的な表現で知られた中町博志ですが、千鳥の足の形を見てみると、意外にも江戸時代の小袖の様式をそのまま踏襲しているんですね。
スポンサーサイト
[ 2017/07/23 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「霞に千鳥」

第三千八百十四回目の作品として、花也の付下げ「霞に千鳥」を紹介します。

千鳥または波に千鳥というテーマの作品は、江戸時代から現代まで繰り返し作られていますし、花也でも何度かつくられています。ベタな感じと言ってしまえばその通りですが、嫌いという人も少ないと思います。今回の作品は、霞ぼかしと千鳥を合わせたシンプルなものですが、このテーマはシンプルな方が良いですよね。え

ところで、今回の作品はブラタクの糸で織った生地を使っています。ブラタクはほとんどをエルメスが使っていることで知られている最高級の絹糸です。ブラタクとは「ブラ拓」で、ブラジル拓殖組合の意味です。戦前、日本では朝鮮拓殖とか満州拓殖とか日系移民のいる国に拓殖組合を作っていました。そのブラジル版がこのブラタクで、その組合から製糸部門が独立したのがブラタク製糸株式会社です。今も社長は日系人で、戦後も日本からの技術指導も行われていたんですよ。

IMG_15082.jpg
いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。今回は線描きによる表現の千鳥もいます。

IMG_15222.jpg
写真2番目は後姿です。

IMG_15172.jpg
写真3番目は袖です。

IMG_15302.jpg
写真4番目は、もう片方の袖です。

IMG_15182.jpg
写真5番目は胸です。暈し霞の上下は、金線で仕切ってあります。左右両端はグラデーションです。

img-18002.jpg
写真6番目は、過去に作られた花也の「波に千鳥」です。これがこの千鳥シリーズとして最初に作られたものです。しかしこれ以前に波だけのシリーズも作られており、それに千鳥を加えたと思えば波シリーズの派生作品でもあるんですね。

img-05002.jpg
写真7番目は、過去に作られた花也の「千鳥」です。波に千鳥の波を外した千鳥だけの作品です。千鳥が少し大きくなっています。
[ 2017/07/22 ] 友禅 | TB(0) | CM(2)

東京友禅と刺繍はの名古屋帯「御所解模様」

第三千七百九十二回目の作品として、東京友禅と刺繍はの名古屋帯「御所解模様」を紹介します。

江戸時代後期に流行った白揚げの友禅に刺繍を合わせた小袖を「御所解模様」といいます。「御所解模様」あるいは「江戸解模様」という名称は、近代になって古着商がネーミングしたもので、制作された当時はこのような名称はありません。「御所解模様」というと公家の着物を連想し「江戸解模様」というと武家の着物を連想しますが、ともに古着商のイメージによるもので、じつはいずれも武家の着物です。また「解」というのは解き洗い張りした着物という意味です。

この様式の小袖は大変流行ったようで多くの作例があります。芸術というのは、創造的でなければ意味がありませんが、流行というのは他人と同じものを着ることに意義を感じることですから、類型的な作品が多くつくられたのでしょう。様式の特徴は、友禅は白揚げのみで彩色はせず、色は刺繍が担当する、部分的に型疋田を使う、ということです。写真7,8番目の参考図版をご覧ください。

IMG_08592.jpg
いちばん上の写真はお太鼓です。現代の着物では、いわゆる御所解風の作品は多くありますが、たいていは草花文と流水(または波)の組み合わせというパターンを真似るだけで、適当に友禅で彩色しています。しかし、この帯は江戸後期に流行った武家の小袖の様式を真面目に再現し、友禅は白揚げのみ、色は刺繍の担当という約束事を厳守しています。また疋田については、型疋田ではなく堰出の疋田にしています。江戸時代のものも描き疋田かもしれませんね。

IMG_08642.jpg
写真2番目は、腹文の全体です。折って見えなくなってしまうところに刺繍をするのは流石にもったいないので、刺繍は片側だけですね。

IMG_08602.jpg
写真3番目は、お太鼓の近接です。菊の花は繍切りという、生地の目に関係なく地を埋める技法です。これも江戸時代後期の様式に忠実です。葉の葉脈に描き絵を併用しているのも古作に忠実です。菊の葉の繍い方も古作の様式にありますね。

IMG_08612.jpg
写真4番目は、お太鼓の近接です。今この説明を読んでいる方が考えていることは、ぎおん齋藤とどう違うの、ということではないでしょうか。ぎおん齋藤の御所解の帯というのは、世界文化社の「きものSalon」やブログの「きものカンタービレ」にも時々登場するので、着物好きの間では有名で、そのためにこのような帯を見ると、ぎおん齋藤風だなあと思ってしまう方も多いんじゃないでしょうか。

じつは私は雑誌やブログに載っている小さい写真でしか見たことが無くて、実際どの程度の加工をしているのかよくわからないのですが、江戸時代後期の武家の小袖の様式である、友禅は彩色せず白揚げで、色は刺繍が担当、疋田併用という約束事をちゃんと守っている、そこらの御所解訪問着とは違う真面目なものだということはわかります。

IMG_08622.jpg
写真5番目は、お太鼓の近接です。刺繍で表現された籠みたいなものは蛇籠といって洪水を防ぐ防災施設です。江戸時代の人はそれを美しいものと考えて模様に取り入れたんですね。

IMG_08672.jpg
写真6番目は、腹文の近接です。

IMG_17412.jpg
写真7番目は参考図版です。

IMG_17442.jpg
写真8番目は参考図版です。
[ 2017/06/30 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千ぐさの色留袖の続き

第三千七百七十三目は、千ぐさの色留袖の続きです。

今回修理した色留袖は、江戸時代後期に流行した蔓模様小袖に想を得たものです。世界的にアールヌーヴォーが流行る100年近く前、なぜか日本に曲線の植物模様が流行しました。最初は蔓植物を選んで模様にしたのかもしれませんが、やがて菊とか楓とか杜若のような蔓ではありえない植物まで蔓のような曲線で表現するようになりました。曲線の植物模様が雪持ちになっている例もあり、この作品はそれを写したと思われますが、鴛鴦を加え、雪が止んだ朝の池の景色にしたのは創作です。

雪に金加工がしてあって、部分的に金色に光っています。雪に朝日が当たってキラキラ光っているからで雪はすでに止んでいることがわかります。葉に乗った雪も水分を多く含んでもう溶けかかっています。その雪の形もちゃんと写生されていますね。鴛鴦は5羽です。本歌の小袖では植物の背景は地染めだけですが、水鳥がいることで背景は水面ということに変わっています。

IMG_06062.jpg
いちばん上の写真は、オクミの鳥です。重厚なあしらいをしていて前姿のアイキャッチポイントになっています。よく見ると縫い目の近くが少し地色が濃い痕跡が残っています。友禅というのは蒸して発色するわけですから、直すときは別の色で直していて、蒸してから色が一致するわけです。しかし完璧な予想はできないので、多少うっすらわかるところがあるのではないかと思います。今後は、仕立てた後に、縫い目近辺を中心に色刷毛という方法で直します。直すというより調整という感じですが、それで完全に直るでしょう。

IMG_05982.jpg
写真2番目はマエミの鳥です。色が地味なメスの方が前を泳いでいるようですし、表情が生き生きしているように見えます。

IMG_06002.jpg
写真3番目は後姿ですが、背中心の手前側ですね。今回の修復では、全体が縫い目の奥のやけていなかった本来の色に戻りました。鳥の周辺は私が思っていたよりくっきりしていて、私が知ったつもりでいたものより綺麗でした。

IMG_06092.jpg
写真4番目も後姿ですが、背中心を越えた向こう側です。あしらいもなくメスで色も地味ですが、溌溂としていて、私にはこの鳥がいちばん魅力的に見えます。この作品ではオスは全て不活発、メスは全て生き生きしています。この着物を選ぶのは女性ですから、作者は女性に配慮しているんじゃないでしょうか。その辺も図案のテクニックかもしれませんね。

IMG_05992.jpg
写真5番目は、マエミの模様の重心がある部分です。唐突に菊が現れたりしてけっこう不自然ですが、これは本歌である小袖を忠実に写したものです。変だなんて思わないで、江戸時代の人の感性をそのまま受け入れればいいと思います。

img-21222.jpg
写真6番目は参考図版で、元になった蔓模様小袖です。今回この色留袖は、袖に金描きで加工して訪問着化する予定です。袖にどのような模様を付けるかと考える時、袖に模様がある元の小袖を復活させればいいわけで、その通りにはできないですが、参考にはなるわけです。私は、この小袖の中ほどから生えている蔓の束を小さくして、袖の裾から生やしたら良いように思います。
[ 2017/06/11 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

修繕が完了した千ぐさの色留袖

第三千七百七十二回目は、千ぐさの色留袖を紹介します。

かつて北秀で仕入れたものです。後に販売するにあたって絵羽を解いたところ、見えていた部分と縫い目の奥で陽に当たらなかっところの色の差が激しく、かなりヤバい商品をつかまされていたことを知りました。写真で見てわかるとおり、絵画的にはとても魅力的な作品です。しかしその一方、雪持ちということで季節限定ですから売りにくいです。そのためあちこちの展示会で貸し出され、どこでも客寄せに壇上に飾られてライトを当てられたのでしょう。

返品するか、北秀の責任で直させればよいのですが、そのときすでに北秀は破産していて文句を言う相手もいませんでした。今回、この難度の高い仕事を引き受けてくれたのは千切屋治兵衛の野村さんですが、けっこうお金もかかりました。模様部分全部を縁蓋で防染して染め直したのです。今回めでたく新装なりましたので、ぜひ見てください。今日は裾模様一周です。

IMG_06032.jpg
いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

IMG_05942.jpg
写真2番目は、マエミ~脇縫い辺りです。

IMG_06112.jpg
写真3番目は、後姿です。中央の縫い目が背中心です。

IMG_06162.jpg
写真4番目は、身頃~下前です。
[ 2017/06/10 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)