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花也の付下げ「切金丸紋」の細部

第四千十一回目は、花也の付下げ「切金丸紋」の細部です。

今回の付下げは、4種類、15個の丸紋から成っています。着物の意匠には、1つ1つの模様は魅力的だが、ただそれが並んでいるだけのものと、1つ1つの模様はありふれているが、それが複雑に展開しているものとがあります。(もちろん、模様が魅力的で展開も複雑なものや、その逆もありますが。)

1つ1つの模様は魅力的であるに越したことはないですが、その模様が展開しないまま終わるのが付下げ、展開していくのが訪問着です。訪問着は、それぞれの模様は陳腐でも展開が奇想天外で面白いというものもありますが、付下げは展開しないのですから、ここの模様に魅力が無ければ全然良いところがないということになります。

今回の作品は、1つ1つの模様の魅力だけで勝負するタイプですから、今日はそれぞれを近接で撮ってみます。胸に使われている模様はすでに近接したので、今日はそれ以外の3つです。

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いちばん上の写真と2番目の写真は、同じ模様を水色と黄緑で並べてみました。

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写真3番目と4番目の写真は、同じ模様を水色と黄緑で並べてみました。

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写真5番目と6番目の写真は、同じ模様を水色と黄緑で並べてみました。

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写真7番目以下は、斜めから撮ってみました。

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[ 2018/02/05 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「切金丸紋」

第四千十回目は、花也の付下げ「切金丸紋」の色違い、生地違いです。

昨日紹介した「切金丸紋」の色違いですが、色だけでなく生地も違います。昨日のは普通の一越の縮緬でしたが、今日のはブラタクの生地です。ブラタクは世界最高品質の絹糸ともいわれ、エルメス製品の9割にこの糸が使われています。

戦前の歴史に興味のある人はすぐに気が付いたと思いますが、ブラタクとはブラジル拓殖組合のことです。戦前の日本は、朝鮮拓殖組合や満州拓殖組合などをつくっていましたが、そのうちブラジル拓殖組合だけが日系人の努力のおかげで今日まで残っているのです。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は片方の袖です。昨日の袖の写真とは反対側を撮ってみました。それぞれの袖が2種類ずつの丸紋で、両方で4種類全部揃います。

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写真4番目は、胸です。
[ 2018/02/04 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「切金丸紋」

第四千九回目は、花也の付下げ「切金丸紋」を紹介します。

タイトルの「切金」は、蒔絵技法の切金か、仏像や仏画を荘厳するときに使う截金のことだろうと思いますが、この作品は、実際にそのような技法を使っているわけではありません。あくまでイメージによるネーミングです。

仏像に使われる截金は、工芸の中でも特に難度が高く高価なものですが、近年、それを絹地の上に行う作家がいるので、それとは関係がないことを書いておきます。これはそんな特殊なものではなく、普通の友禅作品です。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。模様の数は6個、種類は4種類です。付下げとしては、模様が3個または5個でも成り立つので、少しサービスされています。模様の種類の4種類というのは、この作品に使われている模様の全種類です。

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写真2番目は後姿です。模様の数は4個、種類は3種類です。模様が3個でも成り立つので、少しサービスされていますね。模様は4個なので4種類全部揃えてもも良いと思いますが、1つは重複して模様は3種類です。


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写真3番目は袖です。2個で2種類です。もう片方の袖も2個2種類です。

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写真4番目は胸です。胸は1つですから、全部では15個になりますね。
[ 2018/02/03 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千ぐさの色留袖を改造する企画のその後

第三千九百七十六回目は、千ぐさの色留袖を改造する企画のその後です。

前回の記事は、2017年6月10日(三千七百七十二回)とその翌日にあります。もともと北秀で仕入れた鴛鴦の色留袖ですが、雪の積もった芦が描かれていて絵画としては美しいですが、着るタイミングの無い作品でした。北秀でも長年売れなかったらしく赤札市で買ったのですが、その後、絵羽を解いた時に縫い込まれて表面に出ていなかった部分がとても綺麗で、ひどくやけていたことがわかりました。

その原因は、絵画的に優れていたために展示会で飾るのにちょうどよく何度もライトを浴びてしまったためです。しかしそれに気付いた時は北秀はもう破産していて責任を取る人はいなかったのでした。2017年6月10日(三千七百七十二回)の記事はその修繕の顛末でした。

今回、この作品の価値を認めて着てくれる方が現れたため、訪問着に改造することになりました。袖など上半身に模様を付ければ訪問着になるわけですが、友禅というのは糊糸目でもゴム糸目でも、白生地に対して加工するもので地染めをしてしまったらもうできません。

可能な加工は金加工か刺繍か、アクリルによる描画です。アクリルで描けば自由に何でも描けますが、生地がごわごわしてしまうのと、なにより友禅としてニセモノになってしまうのが残念です。今回は、袖に金霞を付けることと、大きめの洒落紋を付けることになりました。

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いちばん上の写真は、袖の金霞です。考えられる加工としては、袖に金描きで裾模様と関連する芦の葉を描くことと、刺繍またはアクリルで飛んでいる鴛鴦を描くことです。袖に飛んでいる鴛鴦がいて、やがて急降下して裾の鴛鴦と合流するという設定にすれば、帯の上下で模様が有機的につながります。

そうなれば素晴らしいですが、一方で失敗するリスクも大きいです。大量の刺繍をすることで高コストになりますし、アクリル絵の具を使うことで不自然になるかもしれませんしね。今回は比較的安全な金霞を選びました。加工をしたのは倉部さんで、ちょっと贅沢なのですが、東京の名門千ぐさに負けないようにしました。

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写真2番目は、大きめの洒落紋です。いろいろ考えたのですが、作品全体を象徴するように、主役の鴛鴦を入れました。刺繍をしたのは花也さんです。倉部さんならなお良かったのですが、ちょっと節約しました。倉部さんというのは技術が素晴らしいとともにセンスも良いのです。倉部さん以外でも京繍の技術を極めている人は何人もいるので、下絵の方針が完全に決まっているばあいは倉部さんでなくても良いというのが私のやり方です。

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写真3番目は、今回の刺繍紋の参考にした福田平八郎の絵です。着物の意匠に関して福田平八郎の貢献はすごく大きいです。本人の許可を得たものも、そうでないものも含めて、センスが良いデザインだなあと思うものは、じつは元は福田平八郎というのが多いです。私も悩んだら福田平八郎の図録を見ます。

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写真4番目は、上の絵を元にして描いた下絵です。鴛鴦を刺繍すると決めたのはお客さまの選択です。福田平八郎の図録から探して基本的な形を決めたのは私で、この下絵を描いたのは本業の下絵師です。些少ながら報酬も払っているんですよ。

裾の模様部分は2017年6月10日を見てくださいね。
[ 2017/12/31 ] 友禅 | TB(0) | CM(1)

花也の付下げ「立附枝花」

第三千九百五十六回目は、花也の付下げ「立附枝花」を紹介します。

花梨をテーマにしていますが、季節が限定されるのを防ぐため「立附枝花」としています。また花の描き方も花梨と特定されるのを避けられる程度の角度で描いています。

技法はダンマル描きです。ダンマルも語源は東南アジアの地名のダマールで、その地に産する樹液を揮発油で薄めたものです。蝋ではないのですが蝋染の一種のような分類で、蝋防染とおなじく厚く置くと完全に防染され、薄く置くと半防染になります。その性質を利用して絵画のような陰影表現をすることができます。

液状のものを筆で描くのですし、本物の蝋染のように温度を高くしなくても良いので、友禅よりも絵を描く感覚に近く絵画表現がしやすいです。しかし純粋な絵画に近いものほど芸術的な評価は厳しくなるものですから、友禅より楽というわけではありません。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。マエミとオクミに2本の直立する枝が描かれていて、オクミ寄りの1本は帯より下で終わりますが、マエミの1本はそのまま帯の下を潜って胸にまで届きます。マエミの裾の方に葉だけが見えますね。ということは、マエミとオクミの裾近くに木の根元があるわけではなく、じつは地面はずっと下にあって、この絵は高木の梢近くの状況を描いたものということになります。

裾近くに葉を描くことで、絵の世界が大きく広がるのです。美術史ではそのような表現はドガの競馬の絵で知られています。ドガの競馬の絵ではキャンバスの端に途切れた馬が描いてあって、そのことで競馬場が広く見えるのです。これはそれと同じ効果を狙ったものですが、もともとは広重の表現をドガが真似たものですよね。

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写真2番目は後姿です。背中心の左右に1本ずつ2本の枝が直立しています。向かって右側の枝(マエミから遠い方の枝)は裾の部分では2本です。この2本の枝は地面から2本生えているのか、地面では1本で途中で枝分かれしたのか、その辺はわかりません。それは着物という画面の外で起こっていることですから。

着物という画面の中だけに樹木の全部を納まっているような図案にすると絵が縮こまります。自然に生えている大木のうち一部分を、たまたま着物という画面に写したという描き方をすると絵が伸び伸びします。

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写真3番目は袖です。袖の裾では2本ですから、これもまた元々2本の木なのか、袖の裾のもっと下の方で1本の木が2本の枝に分かれたものかわからないわけです。このように描くことで木が大きく見えるわけです。

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写真4番目は胸です。直立するマエミの枝が帯の下を潜って胸まで届き、そこでまた花を咲かせています。いちばん上の写真の上の続きです。

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写真5番目は花の近接です。近くにある枝の葉は白がくっきりとして、その後ろにある枝の葉は白が弱く、空気遠近法が使われています。これはダンマルの厚みの違いで、後方ほど薄く置いて半防染効果が発揮されているためです。

これを描いている作家は名前は知らないのですが、父娘でダンマル描きをしていて、父は主に中井淳夫の仕事をしていて、娘は花也の仕事もしていました。父の仕事は中井のダンマル作品として何度も紹介してきましたが、もっと半防染効果を多用し写生的でした。娘の仕事は抑制的で、絵画より工芸を目指しているように見えます。輪郭線もわざと硬くして切り絵や彫物のようなタッチですものね。

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写真6番目は、刺繍(あしらい)のある部分の近接です。金彩とあしらいはダンマルの後の工程ですから、ダンマル作家の判断ではなく花也さんの判断です。
[ 2017/12/12 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)