野口の振袖の続き

第三千七百一回目は、野口の振袖の続きです。

今日は個別の花の丸を近接して撮ってみます。今回のような古典通りの花の丸をパーツとして並べた作品は、全体としての意匠には意味がないわけですから、個別の花の丸を絵として鑑賞するしかないですね。

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いちばん上の写真は、左の外袖の模様です。躍動感のある絵として上手な牡丹だと思います。下のそれぞれの花の丸ですが、菊は高貴ですし、桜はかわいいし、楓にはモダンな雰囲気があります。それぞれの花の長所をちゃんと描きこんでいるんですね。下手な絵というのは、花は種類によって、かわいいとか、高貴とか、それぞれの長所があるはずですが、その描き分けが出来ていないものです。

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写真2番目は、右の外袖の模様です。2つあるうちの上の方です。

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写真3番目は、右の外袖の模様です。2つあるうちの下の方です。

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写真4番目は、肩にある模様です。この桜を見ると、あくまでかわいいのであって高貴とは感じないですよね。牡丹とか菊とはちゃんと描き分けてあるんですね。

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写真5番目は、内袖に有って、今回の全体の写真では見えません。

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写真6番目は、内袖に有って、今回の全体の写真では見えません。

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写真7番目は参考図版です。江戸時代の小袖にも花の丸模様を配した作品はありました。現代の振袖よりむしろ花直丸が大きいぐらいの大胆なものです。刺繍が多用されていますが、現在の作品では残念ながら省略されています。疋田については継承されていますね。
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[ 2017/03/31 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の友禅の名古屋帯「市松取り笹に桜」の細部

第三千六百九十六回目は、花也の友禅の名古屋帯「市松取り笹に桜」の細部です。

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いちばん上の写真は、あしらいのある赤い笹に近接してみました。

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写真2番目は、あしらいのある赤い笹をルーペで見てみました。金駒(金糸の駒繍)は、留め糸どうしの間隔の狭さや均等かどうかを見ると、上手いか下手か検討が付きます。金駒は模様の形をきちんと辿っているのが良いわけですが、留め糸の間隔が狭ければきちんと辿れるわけですから。

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写真3番目は、あしらいのある緑の笹をルーペに近接してみました。赤い色の笹とぶつかるポイントで、緑の笹は後ろにあることがわかります。意外なことにあしらいのある側(強調したい側)が後ろ側なんですね。

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写真4番目は、あしらいのある緑の笹をルーペで見てみました。

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写真5番目は、桜の花弁に近接してみました。友禅による防染と色挿しをした花弁と、金描きで輪郭だけでなく中の筋も描いた花弁とがあります。両者が重なるときは友禅の方が前にあるように描かれていますので、友禅が主文のようです。花弁の形は格調高い古典でもなく写実でもなく、意外におおらかな表現です。

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写真6番目は、生地の地紋部分に近接してみました。見た目は沖縄の花織によく似ていますが、裏を見ると全然違うので、組織としては違うようです。

この作品では糸が浮いた地紋とそうでない地紋を並べることで市松模様を作り、糸の浮かない場所に友禅で模様を付けています。しかし糸の浮いた部分に友禅を描くことによって立体的な絵画に見せるという選択肢もあったと思います。
[ 2017/03/26 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の友禅の名古屋帯「市松取り笹に桜」

第三千六百九十五回目の作品として、花也の友禅の名古屋帯「市松取り笹に桜」を紹介します。

寒いと思っていたらもうそんな時期ですね。

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いちばん上の写真はお太鼓です。市松模様に見える地紋の生地を使い、それを生かして友禅で模様を付けています。模様は市松の配置でお太鼓に6個です。

桜の花弁を背景に笹が描かれていますが、笹は赤が5個、緑が2個です。6個の模様のうち5個に赤があって、残り1つだけが緑です。中央部分にある模様には赤緑両方描いてあります。1つの取り方に1つの笹を配し、赤と緑を3個ずつにすると模様に動きが無くなって平板な印象になるので、微妙にバランスを崩す配置が大事なのです。

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写真2番目は腹文です。模様はどちら側を表に出しても2個ずつです。こちらは赤緑均等ですね。しかしながら、片側は赤だけ、片側は緑だけにして、着る人の年齢やその時の着物の色により選んでもらうというアイディアもあります。純粋な絵画にはできない着物ならではのデザインのノウハウです。

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写真3番目はお太鼓の近接です。図案としてみれば、前側にある笹が主文、後ろ側にある桜の花弁が副文ですね。しかしこれを実際に締める人にとっては桜が主文ということになると思います。桜は季節のイメージが強力過ぎてごまかせませんものね。しかし副文にしたメリットもあって、それは花弁だけにしたことです(主文にするには花や枝が必要)。散る桜ということで4月半ばまで着られます。

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写真4番目は、お太鼓にもっと近接してみました。お太鼓にあしらい(友禅模様の一部を強調するための刺繍)は2か所です。笹の葉の周りを完全に金糸が囲むパターンです。

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写真5番目は、お太鼓にもっと近接してみました。緑の笹のあしらいに近接してみました。
[ 2017/03/25 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

千切屋治兵衛の絽の付下げ(実際の制作は中井淳夫さん)

第三千六百六十八回目の作品として、千切屋治兵衛の絽の付下げを紹介します。実際に制作したのは中井淳夫さんです。

7,8月に着る絽の生地でありながら、5月に咲く藤の花が描かれているという困った作品です。おそらく藤間流の人が注文したのがキャンセルになって、当店に流れ着いたのだと思います。藤間流の集まりだと季節に関係なく藤の模様の着物を着ることもあり得ますものね。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。藤というのは蔓植物ですから曲線模様です。一方藤には棚が付きもので棚を描かなければ絵として成り立ちませんが、棚は直線模様です。曲線模様の蔓だけなら模様を流麗につなげていくことができますが、直線模様の棚があると上手くつながりません。そのような目で、この絵を見ると棚を上手く途中で消して、自然につないでいることがわかります。さすが中井さんの図案なんですね。

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写真2番目は後姿です。

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写真3番目は袖です。植物によって蔓の巻き方は違いますが、中井さんの図案の蔓は、ほんとに日本画みたいですね。

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写真4番目はもう片方の袖です。

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写真5番目は胸です。
[ 2017/02/26 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

一の橋の付下げ「截金華文」の細部

第三千六百四十四回目は、一の橋の付下げ「截金華文」の細部です。

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いちばん上の写真は、各部の近接です。主要3か所の華文はあしらい刺繍があります。3か所とも外延を刺繍するのではなく、芯を刺繍しています。

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写真2番目は、各部の近接です。

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写真3番目は、各部の近接です。

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写真4番目は、各部の近接です。

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写真5番目は、各部の近接です。斜めから撮ってみました。芯の部分の刺繍の立体感がよくわかります。外延ではなく芯を立体化することで、模様が盛り上がるような感じに見せているのではないでしょうか。

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写真6番目は、各部の近接です。これも斜めからです。

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写真7番目は、各部の近接です。裏側から撮ってみました。金彩は裏に透らないので、友禅だけが見えています。意外にハンドペイント的な歪みがあって、そのために端正なだけでなく温かみもあるのです。最初に友禅でこういう状態を描いて、その上に金彩をして、さらに金糸の刺繍をして完成するわけです。
[ 2017/02/02 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)