花也の付下げ「白川女」の細部

第四千百四十四回目は、花也の付下げ「白川女」の細部です。

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いちばん上の写真は前姿の近接です。ちょうどマエミとオクミの縫い目辺りを撮っています。花よりも、線描きで表現された木の芽の方が印象深いですね。

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写真2番目は、さらに近接してみました。

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写真3番目はさらに近接して、橘を撮ってみました。橘の花にわずかに赤系の挿し色がぼかしで入れてあります。前姿のメインの場所ですので、花のいくつかに金糸のあしらい刺繍がしてあります。一目置いて花全体を覆うようなあしらいです。花自体が輝くように見えるのでしょう。

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写真4番目は萩を撮ってみました。萩の葉は白揚げ、萩の花は朱で彩色してあります。

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写真5番目は、菊を撮ってみました。線描きの花芽は、糊筒で置いた糊の形を利用して作画してあります。本来の糊糸目の機能は、染料が浸食しないように輪郭を取ることですが、それだけならば線が正確なら合格です。しかし糊置きそのもので作画する場合は、絵画と同じですから芸術性が求められますよね。

この線描きの木の芽のばあい、糊筒のスピードとか職人さんの力の入れ方抜き方が感じられて、それ自体作品になっているわけです。これが綺麗なだけだったらプリントみたいで退屈だと思います。またいちばん下の枝は少し擦れて染料が浸食しています。これはゴム糸目では見ないことで、糊糸目の情緒ですね。

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写真6番目は、梅を撮ってみました。

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写真7番目は桜を撮ってみました。花束を束ねる紐は綺麗な友禅と金彩で、職人さんの息遣いを感じる線描きとは対照的に端正な仕上がりです。両方できるんだよ、糊のかすれは失敗じゃなくてわざと演出しているんだよ、というところを示しているんですね。
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[ 2018/06/21 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「白川女」

第四千百四十三回目は、花也の付下げ「白川女」を紹介します。

京都には昔から行商の女性として、大原女、白川女、桂女というのがあります。今も「大原女まつり」というのがありますから、大原女が独特のコスチュームとともに、いちばん有名なのではないでしょうか。この作品は人物を省略し、頭に載せた商品だけで表現しています。

作品名が、いちばん有名な大原女ではなく白川女なのは、大原女が扱う商品が薪であったのに対し、白川女は花であったところから、着物の模様になりやすかったからでしょう。興味のある方は「大原女」で検索してみてください。私が好きなのは、小松均の大原女です。これもお暇な方は検索してみてください。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。この作品は以前、水色地を紹介したことがあり、それが売れて久しいので、今回は色違いを仕入れてみました。生地も違っていて、かつてのものはしぼの大きい縮緬を使っていましたが、今回はブラタクの生地を使っています。

模様は全て水平方向ですが、これは頭に乗せて運ぶときの状態です。大原女まつりの写真を見ると、みんなこんな風に頭に載せて列になっています。この作品では人物が省略されていますが、じつは花の束の数だけ人がいて、列になっているというわけです。

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写真2番目は後姿です。花の種類を見ると、松竹梅に四君子をたして、椿や楓や橘や萩も加えていますから、四季花がみんな揃っている感じですね。秋~冬~春と着られてユーザーとしてはありがたいです。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は、もう片方の袖です。外袖は花の束が2つ、内袖は1つです。

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写真5番目は胸です。

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写真6番目は、下前にある模様です。
[ 2018/06/20 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也のジョーゼット地の付下げ「波」の続き

第四千百三十四回目は、花也のジョーゼット地の付下げ「波」の続きです。

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いちばん上の写真は、マエミとオクミの縫い目辺りの上の方です。寒色の水色の地色に対し、暖色の赤系と黄色系の2色の挿し色がしてあります。みんな合わせると三原色っぽい組み合わせになっているんですね。目指すものは色というより光でしょう。

波頭が金糸のあしらい刺繍になっていて、波頭に陽光が当たってキラキラしている演出です。

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写真2番目は、マエミとオクミの縫い目辺りの下の方です。マエミトオクミの縫い目辺りの下の方にもあしらいが2か所あって、あしらいは、前姿に合計5か所です。

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写真3番目は、マエミの下の方で、うねる波です。波頭は華やかですが、うねる部分も凄みがあります。

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写真4番目は、脇辺りで、波頭多発地帯です。
[ 2018/06/11 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也のジョーゼット地の付下げ「波」

第四千百三十三回目は、花也のジョーゼット地の付下げ「波」を紹介します。

花也さんの定番で、いちばんのヒット作でもある波の意匠の付下げを、ジョーゼット地で作ってみました。ジョーゼット地は夏の着物として、アンティークで時々見ます。現代では珍しいのではないでしょうか。

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いちばん上の写真は、前姿(マエミ+オクミ)です。この意匠は、冬用のしぼの大きい縮緬でも、夏用の絽でも作られています。糊糸目の白揚げの波とグラデーションの組み合わせの美しさが作品の趣旨です。冬物には伝統的な暈しの美しさがあります。夏物のグラデーション光をまとう感じです。

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写真2番目は後姿です。従来のこのシリーズは白揚げだけでしたが、この作品は一部が色挿ししてあります。多色ですが淡くて明るい色ですね。着ると、色というより光の一部のように見えるでしょう。

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写真3番目は袖です。

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写真4番目は胸です。

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写真5番目は、生地を近接で撮ってみました。ジョーゼット地の着物は珍しいので、生地の構造を撮ってみました。

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写真6番目は、生地をライトスコープで撮ってみました。

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写真7番目は、さらに拡大してみました。
[ 2018/06/10 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)

花也の付下げ「洋花春秋」の細部

第四千百二十三回目は、花也の付下げ「洋花春秋」の細部です。

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いちばん上の写真は、マエミの近接です。今回の作品は、いつもの花也の特長とは正反対の奇麗なゴム糸目です。糊糸目とゴム糸目はどちらが良いかと言えば、上手い方が良いと思います。下手な糊糸目だったら上手なゴム糸目の方が良いですよね。もう1つは、作品のテーマや作者が表現したいことに合っている方が良いです。この作品はモダンな色彩で洋花を描いたものですから、多湿が生む日本的な情緒は必要なく、真っ白で繊細な糸目が良いのです。クリアな輪郭線ということですね。

ところがその背景に、糸目の無い(輪郭線がない)表現でシルエットのような草花が描かれています。この作品の主役であるクリアな糸目とは正反対な表現ですね。それが遠景になって、作品に遠近感を生んでいるわけです。絵画であればどうということもないですが、染色工程では同じ画面に2つの技法を入れるのは友禅工程が2倍になってしまうので、この部分は職人の技を見せつける部分ですね。

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写真2番目は、マエミの裏側を撮ってみました。上の写真のちょうど裏側部分です。友禅作品において、糸目がある表現をするか、無い表現をするか、というのは作業工程の最初から違う決定的な問題ですが、その両方を1つの画面で行うというのは、アクロバット的な技ということになります。

というわけで、どのような技を使ったのか、裏から見てみました。上の写真と左右反転していますが、気を付けてみてください。なんと背景の草花は、裏から見るとクリアな糸目があるのです。つまり糊置きの段階では全部同じ糸目で、その後、糊伏せして地染めをして、模様を白抜きにしてから彩色したわけですが、前景の花は普通に彩色して、背景の花は糸目の白い線を塗りつぶすように、地染めにはみ出しても構わず彩色されたんですね。

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写真3番目は、マエミの上の方の近接です。若向きの華やかな着物に見えますが、じつは青や黄色が多く、ピンクは極めて限定的に使われています。年齢幅を考慮しているのです。

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写真4番目は、マエミの下の方の近接です。細部を見ると、この作品はゴム糸目であるべき、というのを感じます。ピンクの花はこれがいちばん大きいですが、数はごくわずかです。

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写真5番目は、後姿の近接です。縫い目は背中心です。後姿にピンクの花は1つもありません。

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写真6番目は下前です。綺麗な紫も登場です。

今回の作品のテーマは透明感、ではないでしょうか。NHKの朝ドラなどで新人のアイドルとかを宣伝するときに、美人とかかわいいとかいう代わりに、透明感のある、なんて言いますよね。時代が求めているのはそういうものなんでしょう。呉服業界では、昭和50年代までは、濁りの無い色はコストのかかってない色とみなされ、わざと反対色を混ぜて濁していました。しかし平成になってからは着物の色も濁りの無い色が流行ってきたという事情があります。

私がいちばん尊敬する中井淳夫さんは、もっとも重い色の作者として知られていた人です。平成以降の傾向にどう対応したかと考えると、彼は濁りが無いのに重い色を追求していきました。なかなか考えにくいのですが、作品を見ると、濁りの無い明るい色においても軽薄な感じがないのです。また青戸さんの藍も、黒に近い色でも透明感がありますよね。
[ 2018/05/31 ] 友禅 | TB(0) | CM(0)