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北尾の袋帯「錦繍宝想聖鳥文」の続き

第四千百三十八回目は、北尾の袋帯「錦繍宝想聖鳥文」の続きです。


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いちばん上の写真は、紫の華文の近接です。花弁に当たるところが濁りの無い紫色の濃淡の絹糸で、輪郭線が金糸になっています。

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写真2番目は、さらに近接してみました。紫の絹糸部分は、ただの紫色ではなく金糸が点々と顔を出していました。紫が輝いて見えていたのは、絹の自然な光沢だけではなく、金糸の輝きに助けられてのです。ちゃんと仕掛けが有ったんですね。

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写真3番目は同じ箇所の拡大です。輪郭部分の金糸は、平金糸と撚金糸の両方があり、絹糸の合間から点々と顔を出している金糸は平金糸の方でした。西陣の織物は面倒な仕掛けがいっぱいありますね。土着の人の真面目を感じる素朴な紬も良い織物ですが、仕掛け満載の西陣も良い織物です。

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写真4番目は、赤い華文に近接してみました。華文の近接です。中心部は金が集中しており、それを縁取るように鮮やかで重厚な赤が使われています。

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写真5番目は、赤い部分を拡大していました。やはり絹糸だけでなく、金属糸も応援に使われていました。いずれも平金糸ですが、普通の金属糸だけでなく、赤く輝くポリエステルフィルムを使われていました。これが鮮やかで重厚な赤の正体です。なんでもありですねえ。

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写真6番目は、重厚な輝きを生む撚金糸の束です。

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写真7番目は平金糸部分です。ポリエステルフィルムとか人工的な素材も遠慮なく続いていますが、本金糸も惜しまず使われています。
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[ 2018/06/15 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

北尾の袋帯「錦繍宝想聖鳥文」

第四千百三十七回目は、北尾の袋帯「錦繍宝想聖鳥文」を紹介します。

北尾は2千数百番まである西陣の証紙番号が7であることからわかるように、誰もが知る老舗です。残念ながら少し前に廃業してしまいました。廃業の際には在庫が安く出回るのではないかと期待したのですが、そういうことはありませんでした。本来的に価値があるものとしてどこかの問屋が一括して取り込んだのでしょうね。

北尾の袋帯には、今回紹介するような手織りの豪華な帯と、手織りではあるが爪掻きではない綴とがありました。どちらも高級品で、100万円を超えるものも多くありました。ネットの時代になると、100万円だけど158,000円なんて感じで売られることもありましたが、それはどんなブランドでもあるので仕方がないことだったと思います。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ってみました。

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写真2番目は、模様の位置を少しずらして、帯の幅を写真の幅として撮ってみました。

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写真3番目は模様の一巡です。昔の手織りの帯ですから、紋紙を使って織っていたわけですが、これが紋紙にある情報の全てで、これを単位にして繰り返して1本の帯になるというわけです。お太鼓柄の帯ですと、お太鼓の模様の長さはもっと短いから、紋紙の量も少ないですが、その代わり腹文の模様が別で、別の紋紙が必要になったわけですね。現在は手織りであっても紋紙はプログラムに変わっています。

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写真4番目は近接です。北尾が盛んだった時代のもので、成分表示などはありませんが、金糸は撚金糸はポリエステルフィルム、平金糸は本金糸で、両者を使い分けることで、立体感を表現したり、光の反射合を変えていろんな色の金を見せたりしています。

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写真5番目は近接です。

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写真6番目は裏側の渡り糸です。絵緯糸で多色で複雑な模様を表現しているので、渡り糸が錯綜しています。でも色に濁りがなくとても綺麗なんですね。油絵のばあい、優れた作品は重厚に塗り重ねていても色自体に濁りが無いものですが、質の良い織物も色に濁りがないんじゃないかと思います。それを確かめるべく、私はいつも裏を見るんですよね。
[ 2018/06/14 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「仙桃蘭花錦」の続き

第四千百二十八回目は、龍村の袋帯「仙桃蘭花錦」の続きです。

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いちばん上の写真は、メインの桃の近接です。

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写真2番目は拡大です。七宝文のある桃です。

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写真3番目は拡大です。紗綾形のある桃です。

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写真4番目は拡大です。

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写真5番目は品質表示ラベルです。絹95%ということで金糸の比率が低いことが分かります。今回の作品では金糸が使われているのは模様の輪郭だけでヒカリモノ感が少ないですが、それがこの95%という数字に表れています。紬にも使えそうなのはそのためで、実物を見なくても数字から用途が予想できるわけです。

他の数値は、指定外繊維(紙)は本金糸の比率、ポリエステルは本金以外の金糸の比率、レーヨンはその芯糸です。本金糸は平金糸として使われることが多く、ポリエステルフィルムは芯糸に巻かれて撚金糸として使われることが多いです。もちろんそうでない場合もありますが。

ラベルにある「サ華ル」は参考上代です。参考上代を途方もなく高く設定し現実には安く売っているブランドもありますが、龍村のばあいは百貨店の販売比率が多いですからほぼ現実の数字ですね。ただここ数年、龍村はけっこう激しく値上げしていて新しく織るともっと高いです。

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写真6番目は、昨日の蠣崎波響の西王母の不味そうな桃の部分の近接です。中国の神仙思想というのは、道教の一部なのか、もっと古い信仰なのか私にはわかりません。ただ中国の思想がテーマであっても、儒教に由来すれば意匠も堅くなって帯の用途もフォーマル向けになるのではないでしょうか。

西王母の桃というテーマは不老長寿というだけで、忠だの孝だの押しつけがましいことを言いませんから、フォーマルでも紬でも使い勝手は良いのではないでしょうか。
[ 2018/06/05 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

龍村の袋帯「仙桃蘭花錦」

第四千百二十七回目は、龍村の袋帯「仙桃蘭花錦」を紹介します。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。模様の配置はお太鼓柄ですが、龍村のばあいは「裏太鼓」というのがあって、お太鼓が2個ある状態になっています。着用した時に裏太鼓が外から見えることはありません。

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写真2番目は腹文です。

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写真3番目は、お太鼓にあるメインの桃の近接です。桃の中は紗綾形と七宝文になっています。

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写真4番目は、お太鼓にある蘭の近接です。

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写真5番目は、腹文の近接です。桃は熟れて割れています。

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写真6番目は、帯の端のタイトルです。気の利いたネットショップは、龍村の帯を売るときは帯の端を写していますね。

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写真7番目は、蠣崎波響の「西王母」です。今回の帯は中国の神仙思想の基づくものですから、桃の季節はいつ?なんて考える必要はありません。蠣崎波響といえば松前藩主の子で、「夷酋列像」だけが有名ですが、あれはけっこう若い時のもので、その後、円山応挙の弟子になりました。この絵の西王母の桃は黒くてまずそうですが、よくわかりません。
[ 2018/06/04 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)

織屋さんの名前を忘れてしまった西陣の夏の袋帯「万華鏡」

第四千百十五回目は、織屋さんの名前を忘れてしまった西陣の夏の袋帯「万華鏡」を紹介します。

「紹介します。」と言いながら、名前を忘れてしまってすみません。たしか「羽・・・」で始まるような。

地色はごく淡いピンクです。使用する上では白とほとんど変わりませんが、微妙に色気やかわいさを感じるんじゃないかと思います。

とても使い勝手の良い意匠ですが、それは伝統の有職文様に似ているからだと思います。有職文様には千年の歴史の中で磨かれた普遍的な美がありますから。しかしながら有職文様の普遍的でない部分は、王朝文化由来すなわち天皇関係ということで、格式ありすぎ上品すぎということです。着物の種類やデザインによっては、帯が堅すぎるということもありますね。

その点、この帯の意匠はよくできていて、有職文様に似ていてじつは万華鏡ですから、格の高い着物に合わせる時は有職文様と勘違いさせておいて、カジュアルに見せたい時は、じつは子供の玩具でもある万華鏡でした、という使い方ができるのです。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目は近接です。

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写真3番目は、副文に当たる模様に近接してみました。

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写真4番目は、副文に当たる模様にさらに近接してみました。模様は、普通の西陣織と同じように絵緯糸で表現されています。絵緯糸というのは、全体の組織に貢献せず模様表現のためだけの緯糸で、生地の表に出た部分が模様になり、不要な部分は裏に回っています。

この模様のばあい全体は三角形の模様ですが、本来の絵緯糸で表現されている模様は3つの丸にすぎません。他の部分はじつは裏に回った不要な糸で表現されているのです。これが夏の紗や絽の帯の特徴で、生地が透けているので不要な糸が見えてしまって邪魔なのですが、この作品ではそれを生かしているんですね。

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写真5番目は、副文に当たる模様を拡大してみました。糸が浮いているのが、本来の絵緯糸による表現です。

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写真6番目は、主文に当たる模様に近接してみました。主文も絵緯糸による表現ですが、地色と同じ色の糸で織られています。表に出ている部分は糸が浮いているので、影として模様が見えるのです。裏にある糸は、その部分だけ地厚で影になって見えるのですが、浮いていないので影が弱いのです。

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写真7番目は、主文に当たる模様を拡大してみました。影による表現だけでなく銀糸による光沢の助けもありました。

決して高価な帯ではありませんが、知恵は使っています。西陣の織物は知恵の塊ですね。
[ 2018/05/23 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)