野口の紗の天鵞絨の着尺

第三千四百六回目の作品として、野口の紗の天鵞絨の着尺を紹介します。

天鵞絨といえば、和装では冬物のいちばん温かいコート地ですから、「紗の天鵞絨」というと、夏物なのか冬物なのか、矛盾した言葉に思えますが、手触りも含め、まあそうとしか言いようのない織物です。拡大写真も撮ってみましたので確認してみてください。

私もこういうものがあるということは全然知りませんでした。思い返してみれば、私は2,30年呉服屋をやっていて、お洒落なものや贅沢なものを教えてくれたのは、いつも野口でしたねえ。(糊糸目がどうのこうのと理屈を教えてくれたのは別の人)

今回、たまたま一反だけ仕入れてみましたが、反応が良ければ、来年はちゃんと注文してみようかと思っています。値段によりますが。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。生地の厚い部分と透ける部分とが市松模様のパターンになっています。

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写真2番目は近接です。

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写真3番目は、もっと近接です。ここまで近接すると、透ける部分は紗であること、厚い部分が天鵞絨のような組織であることがわかってきます。

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写真4番目は、生地の厚い部分を拡大してみました。下に赤い紙を敷いてみました。赤が透けて見えるので、厚い部分も紗なんですね。

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写真5番目は、生地の透ける部分を拡大してみました。下に敷いた赤い紙が見えます。ここは紗ですね。
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紗のコート地

第三千四百回目の作品として、紗のコート地を紹介します。

防水加工をしてある紗のコート地です。紗のコートというのは、季節としてはいつ着るべきでしょうか。「紗」だから夏物ではあるのですが、本当の夏は暑くてコートなんか着るのは嫌ですものね。

まずコートというのは、防寒具であるとともに「塵除け」でもあるということです。何十万円という友禅の着物や西陣の帯は、本来は床の間に飾るぐらいの美術品でもありますから、露出したまま人混みなど行きたくないですよね。それで夏物のコートがあるのです。防水加工もしてあるので、急な雨でも短期間なら対応できるでしょう。

コートも着物と同じように、季節ごとに、袷→単衣→紗とあります。しかし、袷のコートは作っても、単衣のコートは作らず、紗に飛んでしまうことはありがちです。そうすると袷が着られなくなった後、4月の半ばぐらいから紗のコートを着ることになりますね。

今日紹介するコート地は、社ではありますが、それほど透け感はないので、そろそろ袷のコートが来たくなくなる4月ごろから着ても違和感は無いように思います。その代わり盛夏は暑苦しそうですが、場によって着たり脱いだりしてもらうしかないかなあ。

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いちばん上の写真は、反物の幅を写真の幅として撮ったものです。

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写真2番目は近接です。あまり透け感はないですよね。

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写真3番目は拡大です。紗ですが、この程度の透き間です。この程度だと見た目は2番目の写真程度です。

一の橋の絵羽コートに合う羽裏

第三千三百八十五回目は、一の橋の絵羽コートに合う羽裏を考えてみます。

左側に表地、右側に裏地を並べてみました。

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いちばん上の写真は、岡重の羽裏「京野菜」を合わせてみました。岡重が大正時代に型染で制作していた羽裏を復刻したシリーズの1枚です。当時の型染はすでに技術的に頂点に達しており、写真のような細密な表現も可能でした。この「京野菜」はその代表的な一点です。今の人はそんなことは知りませんでしたから、岡重の復刻版を見たときはびっくり、各地の美術館で展覧され大きな話題になりました。

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写真2番目は、岡重の羽裏「天使」を合わせてみました。これも大正時代の復刻版の1枚です。

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写真3番目は、野口の羽裏を合わせてみました。野口らしいセンスの良い格子です。格子ですからシンプルと言いたいところですが、多色で制作工程を考えると結構コストがかかっているかもしれませんね。

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写真4番目は、うちに以前からある羽裏を合わせてみました。かつては裏地専門の染屋さんがあって、安い値段で色数が限定されたものをつくっていました。しかし販売数量が減るとともに採算が悪くなりほとんど廃業してしまいました。そのかわりに岡重や野口の多色で高級な羽裏が現れたわけです。岡重や野口の羽裏は、表地を染める染屋が染めているためにレベルが高いですが、値段も表地と同じになってしまいます。

私は最近、当社で昔から在庫としてある羽裏の調査を行い、ネット上で一覧表を作りました。昔は切り売りが常識だったため、中途半端に残っている生地が沢山あったのです。それを1反ずつ長さを測って使えるかどうか調べたんですよ。これはその時に確認した1点です。1尺1000円で売っています。

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写真5番目は、千切屋治兵衛の羽裏「雪輪」を合わせてみました。これはシンプルに見えますが、近年、表地の染屋によって染められたものです。ちょっと見では、表地も裏地も同じような丸紋にも見えますから、表地の模様を裏地でシンプルにしたパターンに見えますね。

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写真6番目は、藤井絞の羽裏「正倉院御物五弦の琵琶」を合わせてみました。上の5点は型染で連続して繰り返す模様ですが、これは絵羽の羽裏です。琵琶の形と梅の花の形は絞りによる表現、弦と草花模様は金描きによる表現です。コートというのは、パーティー会場に入るときに脱ぎますから、見せるチャンスもあります。いきなりクロークに預けてしまうとホテルの従業員にしか自慢できませんから、みんなが集まってから脱ぐ必要がありますね。

一の橋の絵羽コートの続き

第三千三百八十四回目は、一の橋の絵羽コートの続きです。

今日は個々の模様を斜めから撮ってみました。金線がゆがむ絵が重力波の説明みたいで面白いです。金線というのは本来、友禅作品の仕上げ工程において、模様の一部を強調したり装飾したりするものです。その場合の金線は、独自に模様を形成するのではなく、友禅の模様の輪郭をたどるだけです。

しかしながら、その友禅工程で下働きのような金線の作業を主役にしてみようという発想が現れたのです。この作品では金線の形が先に設計され、その金線に合わせて隙間になる部分に友禅彩色したように見えますね。

このような発想の作品は、一の橋以外でもいくつかの京友禅のメーカーで作られていて、昔流行った円形の定規を使って花のような幾何学模様を描く遊びを思い出させます。今回、この絵羽コートを仕入れるにあたって、金線で幾何学模様を描くという発想は誰が始めたものか訊いてみました。すると、なんと中井淳夫さんだというのです。

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一の橋の絵羽コート

第三千三百八十三回目の作品として、一の橋の絵羽コートを紹介します。

飛び柄のコートは、飛び柄の着尺から作るのが合理的です。野口や岡重の重厚な飛び柄小紋を利用してコートや長羽織にすれば、かなり今日の絵羽コートに似たものができます。それでもあえて飛び柄のコートを絵羽としてつくる理由は、型染である小紋からスタートすると全部同じ模様になるが、絵羽は手描きであるため模様が全部違うということ、型よりも手描きの方が模様に重みがありますしね。

模様の数は、着尺を流用するよりも少なくて済みます。あらかじめ合理的に模様配置を決められるので、視覚的に効果的なところにだけ描けばいいからです。さらに視覚的に重要なところには刺繍(あしらい)もします。作り手としては、値段が安い方が売りやすいですから、なるべく少ない数で出来るだけ立派に見える配置を考えるでしょうね。

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いちばん上の写真は全体です。

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写真2番目も全体ですが、反対方向から撮ってみました。光の当たり方で地色もずいぶん違って見えますね。

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写真3番目以後は近接です。個々の模様がこの作品の存在意義ですから、よく見てくださいね。

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