藤井絞の桶絞りの訪問着の帯合わせ

第三千七百八十六回目は、藤井絞の桶絞りの訪問着の帯合わせです。

今回の訪問着は透明感のある爽やかな色の作品です。染液に浸ける絞りの工程を考えれば、ミスをして染め直したりすればそのたびに色は濁っていくわけで、透明感のある爽やかな色ということは技術の高さを示すことでもあります。一方、帯で「透明感のある爽やかな色」を持つ作品と言えば織悦ですから、今日は爽やかどうし、織悦で帯合わせをしてみます。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯「厳島花鳥蝶華文」を合わせてみました。平家納経をテーマにした帯で、色は明るい銀地です。

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写真2番目は、織悦の袋帯「柴垣秋草文尽し」を合わせてみました。琳派の秋草模様ですが、白い地色の上に濁りのない色で秋草文を織り出したものです。

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写真3番目は、織悦の袋帯「枝栗繍文」を合わせてみました。タイトルに「繍」の文字があることから、本歌は刺繍作品とわかります。刺繍作品を織物に写しているわけで、織物でありながら、織物の意匠の特徴であるパターンよりも刺繍の意匠の特徴である自由を感じます。背景は金地です。

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写真4番目は、織悦の袋帯「枝菊吉向地文」を合わせてみました。地の亀甲と模様の枝菊とが二重に重なっているように見える二陪織物の様式です。喜多川俵二の有職織物でおなじみですね。地色は経が青、緯が金で玉虫のように見えます。

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写真5番目は、織悦の袋帯「ペルシア狩猟楽園」を合わせてみました。地味な茶色の地色に細かい模様で、年輩者向きのように思えますが、よく見るとかわいい動物がいて若い人向きにも思えます。かわいいおばあちゃんにも。

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写真6番目は、織悦の袋帯「インド華文更紗」を合わせてみました。地色が桜色で、着物の染分けに無い色ですが、大きな更紗模様の色は着物の4色と共通の色を含んでいます。
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[ 2017/06/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

藤井絞の桶絞りの訪問着

第三千七百八十五回目の作品として、藤井絞の桶絞りの訪問着を紹介します。

美しいキモノの2015年冬号の表紙に使われた着物です。その表紙は知的所有権の問題がありますからここでお見せすることはできませんが、「美しいキモノ 2015冬」で検索していただくと、ハースト婦人画報社のホームぺージかアマゾンで見られます。

全体が桶絞りで作られた着物です。桶絞りという技法は、生地の染めたくない部分を桶に入れ、染めたい部分を桶から出した状態で蓋をして縄で縛って圧力をかけ、染液に浸けるという方法です。たかが染分けをするためだけに、なぜそんなまだるっこしいことをしなければならないのかと思いますが、それはいろんな技法がある現代人の感覚で、室町時代の人にとっては、桶を使うというのは合理的な技法だったのです。

現代の辻が花に使われる絞の代表的な技法は帽子絞です。生地の絞りたい部分を摘まんで芯を入れ、それをビニール(フィルム)で包んで防染して染液に浸けます。室町時代も同じですが、プラスティックフィルムのようなものはありませんから、竹の皮あるいは油紙を使いました。竹の皮は竹の円周を超える大きさのものはありませんし、油紙というのも心もとないですから、小さい面積しか防染できませんでした。

大きい面積を染分けるにはどうしたらいいか、そこで登場するのが桶なのです。まだるっこしく感じますがプラスティックフィルムが無い地代はそれが唯一の方法なのです。現在では大きいプラスティックフィルムで包めばいいのですが、じつはそれが問題で、巨大な帽子絞でも染分けできてしまうために、一見同じに見えてもホンモノの桶絞りとニセモノの桶絞りが生じてしまったのです。現在、京都で桶絞りをしている工房は1軒か2軒ではないでしょうか。これはその数少ないホンモノです。

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いちばん上の写真は全体です。着物の意匠と思えば、使われている技法は絞りだけですし、パターンを繰り返すシンプルなものに感じます。しかし桶絞りの工程を考えると、どうやって桶の中に入れる部分と出す部分を選択したのか、複雑怪奇な気がします。

色は爽やかですから、染め重ねることはしていないのです。つまり一色は1回で決めなければいけないんですね。おそらく水色を染める時は水色以外の部分を桶に入れて水色の染液に浸け、黄色を染める時は黄色以外の部分を桶に入れて黄色の染液に浸るということを、色数だけ繰り返したんだと思います。

染分けの内部は花の模様が白抜きになっていますが、これは小さい面積の絞ですから帽子絞りです。桶絞りをしつつ、入れ子的に帽子絞りもしているんですね。

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写真2番目は、前姿(マエミ+オクミ)です。友禅のばあいは、中井淳夫さんのような重厚な色が良い場合もありますが、絞りは失敗して何度も絞り直していればいやでも重厚になってしまいます。色が爽やかであるということは、1度で鮮やかに決めているという技の凄さを表しているわけです。

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写真3番目は、前姿~脇縫い~後姿です。現在は染分けの技法はいろいろあるわけですが、その中で特に面倒な絞りを選ぶ理由は何でしょうか。私は輪郭線が軟らかくグラデーション効果があることだと思います。特にこの作品は全身染分けで、グラデーションの見せ場だらけです。

普通の桶絞りは、刺繍や箔を併用することが多いです。絞りがグラデーション担当で、その他の技法がコントラスト担当でバランスが取れるのです。しかしこの作品はグラデーションだけで柔らかい一方ですから、漫才でいえばボケだけですね。そのことで着る人を優しく見せますし、コントラスト役を帯に任せているとも言えます。そこのところは帯合わせで改めて論じたいと思います。

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写真4番目は後姿です。中央の縫い目は背中心です。

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写真5番目は背中心辺りから下前です。
[ 2017/06/23 ] 絞り | TB(0) | CM(0)

金谷の八寸の名古屋帯「市松」の帯合わせ

第三千七百八十四回目は、金谷の八寸の名古屋帯「市松」の帯合わせです。

昨日は、帯に絵画性が無いことから着物で絵画性を補うという発想で帯合わせをしました。今日は、帯に絵画性が無いのは作者の意図と解釈し、その意図を貫徹させてあげるため、着物も無地と縞と格子にして、全身無地系にしてみました。無地系という言葉を呉服業界に認知させたのは森田空美さんということが有名になりすぎて、無地っぽいコーディネートをしていると森田空美風と言われますよね。

私は無地系の良いところは、とりあえず着ている人を頭が良さそうに見せるところだと思います。悪いところは、失敗ということが無いので誰でも真似できてしまい、またかと思われるところですね。

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いちばん上の写真は、齋藤頴さんの館山唐桟を合わせてみました。白黒の帯に、さらに無彩色のグレーの縞を合わせて、模様だけでなく色さえ無くして無地系を貫徹してみました。

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写真2番目は、林宗平の塩沢紬の藍の縞を合わせてみました。白黒の帯に紺色の着物の組み合わせです。

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写真3番目は、牛首紬の無地を合わせてみました。グレーの無地の牛首ですが、グレーの色にちょっと甘みがあって、それが微妙な色気になっています。無地系の持つ知的なイメージを維持しつつ女性的な色気も出そうと思うと、色の微妙な部分で勝負することになるんじゃないんでしょうか。

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写真4番目は、久米島紬の細かい格子を合わせてみました。泥染の微妙に焦げ茶味のある黒に細かい格子です。

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写真5番目は、白鷹紬を合わせてみました。白鷹町を産地とする織物で、経産省の伝産マークの区分では「置賜郡の紬」に含まれます。塩沢にお召である本塩沢と真綿である塩沢紬があるように、白鷹町には白鷹お召と白鷹紬があります。これは手紡ぎ真綿糸を使った手織りの紬です。

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写真6番目は、久米島紬の縞を合わせてみました。今日でいちばん上手な帯合わせになりました。そう思いませんか。
[ 2017/06/22 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

金谷の八寸の名古屋帯「市松」の帯合わせ

第三千七百八十三回目は、金谷の八寸の名古屋帯「市松」の帯合わせです。

今回の帯は市松模様だけで絵画的な要素が無いですから、絵画的な絣を合わせることでバランスを取るのが良いと思います。しかしながら、模様のない帯を織った人は、模様が無いことが美しいと思ったのかもしれませんから、着物も模様のないものを合わせて、帯を織った人の意図を貫徹させてあげても良いです。

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いちばん上の写真は、重要無形文化財の結城紬を合わせてみました。百亀甲の総柄です。

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写真2番目は、六条雪山紬(本当は塩沢紬)を合わせてみました。先日、悪い例として使った六条雪山紬を普通に使ってみました。

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写真3番目は、弓浜絣を合わせてみました。弓浜絣は民芸的な雰囲気が特長ですから、物語性のあるデザインが好きです。

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写真4番目は、弓浜絣を合わせてみました。普通の木綿の絵絣は紺地ですが、これは色を反転させたもので、グレー地で模様が紺です。帯が黒白の無彩色ですから、着物をグレー地にすることで、無彩色モノトーンをつくって、色だけは無地系着物の思想を取り入れてみました。

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写真5番目は、林宗平の塩沢紬を合わせてみました。現在は息子さんの代ですが、林宗平さんの時代は「古代紬」というブランドでした。有栖川龍文を並べたもので、しつこいぐらい模様が有りますが、帯は模様が無くバランスが良いのではないでしょうか。

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写真6番目は、ジャワ更紗の着尺を合わせてみました。かつてインドネシアとの貿易不均衡を是正するため日商岩井が企画したチャンチンによる紬の着物です。日本から紬の白生地を輸出し、現地でチャンチンを使う作家が加工し日本に輸入したものです。こんなことで貿易不均衡が解消するとは思いませんが、何か努力しようとする態度を示す必要があったのでしょう。
[ 2017/06/21 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

金谷の八寸の名古屋帯「市松」

第三千七百八十二回目の作品として、金谷の八寸の名古屋帯「市松」を紹介します。

今日は、先日まで紹介していた金谷の八寸の名古屋帯の違う模様です。八寸の帯と九寸の帯の違いですが、どちらも名古屋帯で身に付ける時の幅は八寸です。八寸の帯は縁の部分をかがりますが、九寸の帯は芯を入れて仕立てます。仕立てる時の縫いしろが1寸というわけです。

両者の違いは、八寸の帯はカジュアル感が強く、たいていのばあい紬の着物にあわせるのに対し、九寸の帯は多少フォーマル感が有って紬の他小紋にも合わせることが多いということです。素材は、八寸の帯は芯が無くても形が崩れないように太い糸が使われた厚手の生地であるのに対し、九寸の帯は芯を入れるので生地は自由です。

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いちばん上の写真は、帯の幅を写真の幅として撮ったものです。市松模様で六通になっていますから、お太鼓も腹文も同じ市松です。腹文としては半分に折りますから見えるところは市松ではないですね。

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写真2番目は、少し近接してみました。経緯ともに白糸と黒糸があって、白×白、白×黒、黒×白、白×白の4通りの場が生じ、市松になっているのです。白×黒と黒×白は同じではなく、経糸が黒の方が黒く見えるようです。なぜそうなるか解明するために下の写真で拡大してみました。

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写真3番目は拡大です。経糸の方が表面に露出している面積が大きいので、経糸が黒の方が黒く見え、経糸が白の方が白く見えるようです。
[ 2017/06/20 ] 西陣・綴 | TB(0) | CM(0)