野口の手挿しの訪問着の帯合わせ

第三千七百二十九回目は、野口の手挿しの訪問着の帯合わせです。

今回の帯合わせの難しい点は、着物が2本の樹木として根元から梢までの絵として完成していることです。その完成した絵に対し帯で別の絵を加えることの是非ですね。昨日は、間道など意味のない文様を合わせて、絵を加えることを避けました。今日は、考えながら絵や意味のある帯を合わせてみたいと思います。

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いちばん上の写真は、織悦の袋帯「厳島花鳥蝶文錦」を合わせてみました。樹木だけを描いて絵として完成した着物に、もし不足するものがあるとしたら、それは梢にいるはずの鳥かな、ということで鳥の居る帯を合わせてみました。都合よく蝶もいますね。

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写真2番目は、龍村の名古屋帯「双鳥花文」を合わせてみました。これも樹木に鳥を止まらせるつもりで合わせてみました。

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写真3番目は、紫絋の袋帯「臈纈花鳥文」を合わせてみました。これも鳥狙いです。

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写真4番目は、大西勇の袋帯「有栖川龍文」を合わせてみました。江戸時代の小袖にある立木模様は、1本の樹木を根元から梢まで堂々と描いたものですが、この作品はその現代的翻案だと思います。しかし、江戸時代の立木模様はじつは、インドの「生命の樹」の翻案だそうです。元が宗教的な意味を含んだ神聖な木であれば、空には龍が飛んでいても良いか、ということで。

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写真5番目は、洛風林の袋帯「飾宝華文」を合わせてみました。「華文」「唐草」「更紗」のような、元が植物からインスピレーションを受けた文様は、樹木に対してどうでしょうか。もう文様になってしまったから関係ないのか、まだ植物どうしということで意味が重なるのか。

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写真6番目は、帯屋捨松の袋帯を合わせてみました。上の例をもう1度試してみました。こちらは配色にインパクトが有って、模様の中味は忘れてしまうかも。

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写真7番目は、大西勇の袋帯「正倉院象文」を合わせてみました。この帯の元絵は、「正倉院御物臈纈屏風」で、象と樹木からなっています。この帯の意匠はそれをそのまま写したものですが、樹木部分は帯として締めると隠れてしまいます。その隠れた樹木を着物の模様で復活させてみたという、芸の細かい帯合わせです。
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[ 2017/04/28 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の手挿しの訪問着の帯合わせ

第三千七百二十八回目は、野口の手挿しの訪問着の帯合わせです。

テーマがはっきりして、1つの意味のある絵として完成しているような着物に対する帯合わせは、意外に難しいことがあります。理想を言えば、その完成した絵に足りないものを補完するような帯が有ればいいのですが、「完成」しているわけですから難しいですよね。

今日は間道のような純粋な文様で、それ自体に意味がないようなものを合わせます。着物の絵が意味的に完成しているので、意味を足さない帯合わせです。

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いちばん上の写真は、龍村の袋帯「郁芳間道」を合わせてみました。

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写真2番目は、龍村の袋帯「ちとせ間道」を合わせてみました。

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写真3番目は、龍村の名古屋帯「飛鳥間道」を合わせてみました。法隆寺の「蜀江小幡」の手の部分に使われてもいる裂で、龍村の商品名は「飛鳥間道」ですが、学芸員が使う一般語としては「山菱文錦」だと思います。

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写真4番目は、おび弘の袋帯を合わせてみました。少したわみのある車線で、グラフィックデザインのようですが、素材も技法も西陣の伝統そのもののような手織りの帯です。「おび弘」は池口さんで、あの「佐波理つづれ」と同じ証紙番号607です。

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写真5番目は、龍村の名古屋帯「シャムパーシン」を合わせてみました。龍村は国別にテーマを決めた展示会をしていたことがありましたが、これはタイやカンボジアをテーマにした展示会の時に発表されたものです。意味はあるのでしょうが、私にもたいていの日本人にも分からないので、意味を足さない帯として使ってみました。
[ 2017/04/27 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)

野口の手挿しの訪問着の続き

第三千七百二十七回目は、野口の手挿しの訪問着の続きです。

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いちばん上の写真は袖です。袖の裾から枝が出て、弧を描くように伸びています。この訪問着で描かれているのは、前姿1本、後姿1本、計2本の樹木だけですし、その種類も同じです。葉はなく花だけですし、その花も全部同じ向きです。とてもシンプルな図案なんですね。

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写真2番目は、前姿の上の方の花の多いところです。裾から伸びてきた幹は一度オクミの方に曲がって、オクミとマエミの縫い目をまたいだメインの模様になります。普通の付下げの模様は、マエミ、オクミというように別の模様が有るわけですが、1本の樹木をテーマにしていると、模様を置きたい場所に幹が曲がっていって、そこで花をつける図案になるわけです。

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写真3番目は、前姿の下の方の花の多いところです。普通の付下げでもマエミの下の方に模様が有りますが、その役割を果たす枝が生えています。太い幹よりも細い枝の方が色が濃いんですね。この方が模様が締まるんでしょうか、図案のテクニックなんでしょうね。

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写真4番目は、後姿の模様の花の多いところです。花は同じ形のようですが、縁取りが有るものとそうでないものがあり、強弱感が有ります。花は全部前を向いていて、子供が描くような形ですが、「下手な絵」なのではなく「装飾的な画面」なのです。

野口の手挿しの訪問着

第三千七百二十六回目の作品として、野口の手挿しの訪問着を紹介します。

手描き友禅と型染(現在はほとんどシルクスクリーン)の間に手挿しがあります。手挿しは型糸目ともいうのですが、糸目すなわち模様の輪郭線だけに型を使い、模様の内部は手描きするものです。手描きと型染を見分けるために、裏を見て染料が裏まで透っているか見ることがありますが、この方法では手挿しと手描きを見分けることはできません。色はどちらも手で挿しているわけですから。

どこが違うかというと、手挿しは複数生産を前提としているので、日本のどこかで、誰かが同じ模様の色違いを着ていることです。いきなり量産するのではなく、毎年1,2枚ずつ、流行が変わって売れなくなるまで作り続けるので、最終的に何枚作るかはわかりません。昔は数十枚作ったでしょうが、今では不人気なら数枚、人気でも十数枚でしょうか。

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いちばん上の写真は前姿です。この作品は反物で制作され、指定された箇所で裁つと模様がつながって訪問着になるようになっています。

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写真2番目は前姿ですが、おはしょりや帯の裏になって見えないところです。前姿の下から生えてきた樹木は、付下げであれば帯の下で梢まで描いて一度終わるところですが、この帯の裏を通り抜けていきます。訪問着的な構成ですね。

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写真3番目は胸です。裾から変えてきた樹木は帯の裏を突き抜けて胸にまで達し、そこに梢があります。

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写真4番目は後姿です。左側の枝は前姿の樹木から繋がってきている枝です。後姿の裾からも1本樹木が生えてきています。

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写真5番目は、後姿を縦の写真で撮ったものです。後姿の樹木もけっこう上まで伸びていて横の写真では入りきらないので、縦の写真で撮りなおしてみました。

龍村の絽の名古屋帯「花音」の帯合わせ

第三千七百二十五回目は、龍村の絽の名古屋帯「花音」の帯合わせです。

今日は思い切りカジュアルに合わせてみます。普通は龍村の帯はこんな風に使わないかもしれないですね。帯合わせにおいてフォーマルとカジュアルとでギャップのあるものを合わせると、バランスが悪いとも言えますが、着て行ける場が広くなるとも言えます。どちらになるか、色やデザインを上手く合わせればなにもかも上手く行くものです。

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いちばん上の写真は、ポーラを合わせてみました。ポーラは、poralの意味で、ウールのうち撚りの強い梳毛糸 (そもうし)で平織りにした織物を言います。さらさらとした手触りで通気性がある夏物のウールです。梳毛糸というのは、長くて良く揃った羊毛を紡績工程でよくくしけずって繊維を直線状に引伸ばしたものです。

日本語の「ポーラ」というのは、おそらく商標登録されたネーミングで、その会社はすでに生産を中止しているのではないかと思います。今もポーラの相当する着物はいくつかのメーカーから出ている」ようですが、サマーウールの仲間として別の商品名になっています。「サマーウール」という言葉が一般語なのか、誰かの商標であったのかその辺はわかりません。

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写真2番目は、ポーラを合わせてみました。ここで紹介しているポーラは、商標を持つメーカーのポーラです。昨年、高梨という問屋で掘り出し物としてまとめて買ったので、本来のメーカーは生産中止していると知った次第です。そのようなものは、早く処分すべき無用なものと考える人と、確保しておかないともう見られない希少なもの考える人がいます。無用なものと考える人から買い、希少なものと考える人に売るのが商人の仕事ですよね。

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写真3番目は、小千谷縮を合わせてみました。ラミーで織られたお洒落な夏の着物です。無地、縞、格子、経絣、経緯絣が有って、値段も段階になっています。これは縞のようですが、縞が途切れているのでその場所を防染しているわけですから経絣ですね。

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写真4番目は、小千谷縮を合わせてみました。これは白、淡いベージュ、ベージュの3色の麻の糸を使った格子です。経緯の糸を、白×白、淡いベージュ×淡いベージュ、淡いベージュ×ベージュ、ベージュ×ベージュと組み合わせることで4つの色の面ができます。写真で見える4つの面がそれですが、それを意匠にしているわけです。織物を意匠を考えることは図形の問題を解くような感jですね。

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写真5番目は、近江ちぢみを合わせてみました。小千谷縮と同じラミーで織られた夏のカジュアルです。織っているのは、愛荘町にあって近江上布の織元である川口織物です。小千谷縮より少し安いですね。どちらが良いかと言えば、お洒落なカジュアルですからデザインで選べば良いと思います。

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写真6番目は、奥順の「結城手織ウール紬」を合わせてみました。奥順というのは、結城紬のいちばん有名な織元ですが、かつてウールを織っていたことがあったとは、相当着物に詳しい人でも知らなかったのではないでしょうか。小幅で経緯の絣を合わせた織物ですから、そんなものを機械で大量生産したとは考えにくく、本当にウールを手織りしたんだと思います。文化財の結城を織らせることができない初心者の織り手を使ったのか、当時の状況はわかりませんが、ウールの結城紬があると言ったらオーパーツですよね。

[ 2017/04/24 ] 帯合わせ | TB(0) | CM(0)